労務相談
うちは大丈夫。それ、本当に言い切れますか?
職員に関する問題に頭を抱えている経営者様は少なくありません。
「たいした理由もなく残業をして残業代を請求してくる。」
「繁忙期にもかかわらず、平気で有給休暇を取得しようとする。」等々・・・
「体調が悪いように見えないけれども、休職、復職を繰り返す」
こういった事例は、事業所の規模、職員数に関係なく、しかも突発的に起こります。
このような話をすると、「うちは大丈夫」「うちの職員に限って・・・」とおっしゃる経営者様もいらっしゃいます。
しかし、大丈夫だと思っていても実は目に見えない水面下で職員の不満がたまっており、そしてそれが大きな労働トラブルに発展したというケースも実際は多く見受けられるのです。
大きな労働問題に発展した事業所の多くは、円満経営をしていたと思っていたにもかかわらず、このような被害にあっているのです。円満経営をしていたからこそ、その雰囲気に安心しきっていたというのが本当のところかもしれません。
いざ労働問題が発生したとき、労務環境の整備が不十分だった、こういうことは、よく耳にする話です。
労務トラブルの本当の原因は
労務トラブルの原因は、労働基準法、労働契約法、男女雇用機会均等法といった労働法の知識が乏しいから。
もちろん、それも原因の一つでしょう。しかし、もっと根本的な原因があるのです。
労務トラブルを防ぐ第一歩は、労働基準法などの法律を熟知し、それに則って職員を働かせること。また、就業規則をはじめとした社内ルールを正しく整備し、これを正しく運用することもそうでしょう。これは社内トラブルを防止するための絶対条件です。
しかしながら、これだけでは十分ではありません。
なぜなら、労働法を熟知している経営者の方々の事業所でも労務トラブルは起こりますし、極端な話をすると、私どものような労働法の専門家である社労士の事務所でさえも、労務トラブルは十分に起こりえるからです。
では、労務トラブルが起こる根本の原因は何でしょう。
介護労働人材センターの「平成 23 年度介護労働者就業意識実態調査」によると、介護労働者が介護の仕事を選んだ理由としてもっとも多いものは、「介護や福祉の仕事に関心があったから」というものです。
これは、就業前から福祉の仕事に対して大きな関心があったことの表れでしょう。
現在の仕事を選んだ理由(複数回答) | 全体 | 正規職員 | 非正規職員 |
---|---|---|---|
働きがいのある仕事だと思ったから | 55.7 | 56.4 | 54.6 |
今後もニーズが高まる仕事だから | 38.8 | 40.9 | 35.4 |
資格・技能が活かせるから | 36.4 | 35.9 | 36.4 |
人や社会の役に立ちたいから | 35.4 | 35.7 | 35.3 |
お年寄りが好きだから | 29.0 | 29.3 | 28.8 |
介護の知識や技能が身につくから | 24.8 | 21.4 | 32.3 |
生きがい・社会参加のため | 17.9 | 16.3 | 20.2 |
身近な人の介護の経験から | 17.7 | 16.3 | 21.1 |
自分や家族の都合のよい時間(日)に働けるから | 14.4 | 6.7 | 30.6 |
給与等の収入が多いから | 3.7 | 3.5 | 4.0 |
他に良い仕事がないから | 10.9 | 10.8 | 11.1 |
その他 | 4.3 | 4.7 | 3.6 |
特に理由はない | 2.8 | 3.3 | 1.8 |
しかしながら、実際の就業時において同調査における「現在の仕事の満足度」では「仕事の内容、やりがい」については半数以上が満足度が高いという結果でしたが、その反面「仕事に対する不安、不満等」については、およそ半数が「仕事内容の割に賃金が低い」「人手が足りない」といったことをあげていました。
現在の仕事の満足度(満足+やや満足) | 全体 | 正規職員 | 非正規職員 |
---|---|---|---|
仕事の内容・やりがい | 53.2 | 53.4 | 53.4 |
キャリアアップの機会 | 23.4 | 26.2 | 17.7 |
賃金 | 17.4 | 17.1 | 18.5 |
労働時間・休日等 | 29.5 | 27.7 | 33.4 |
勤務体制 | 26.5 | 24.9 | 30.0 |
人事評価・処遇のありかた | 18.5 | 18.8 | 18.0 |
職場の環境 | 37.9 | 37.7 | 39.2 |
職場の人兼関係、コミュニケーション | 45.3 | 44.7 | 47.1 |
雇用の安定性 | 34.3 | 36.6 | 30.4 |
福利厚生 | 23.9 | 26.1 | 19.7 |
教育訓練・能力開発のありかた | 17.9 | 18.7 | 16.2 |
職業生活全体 | 24.7 | 24.9 | 23.9 |
労働条件等の悩み、不安、不満等 | 全体 | 訪問系 | 施設系 (入所型) |
施設系 (通所型) |
---|---|---|---|---|
仕事の内容の割に賃金が安い | 44.2 | 35.8 | 56.1 | 44.2 |
人手が足りない | 40.2 | 33.0 | 51.9 | 39.1 |
有給休暇がとりにくい | 36.1 | 28.1 | 47.0 | 36.7 |
身体的負担が大きい(腰痛や体力に不安がある) | 30.8 | 24.9 | 42.4 | 28.1 |
休憩がとりにくい | 29.4 | 21.5 | 34.0 | 34.7 |
業務に対する社会的評価が低い | 29.3 | 28.7 | 35.4 | 25.5 |
精神的にきつい | 28.2 | 26.7 | 36.7 | 23.4 |
夜間や深夜時間帯に何か起きるのではないかと不安がある | 19.8 | 11.1 | 46.0 | 8.1 |
健康面(感染症、怪我)の不安がある | 15.0 | 13.6 | 18.7 | 13.5 |
労働時間が不規則である | 13.3 | 13.7 | 20.5 | 7.1 |
福祉機器の不足、機器操作の不慣れ、施設の構造に不安がある | 12.3 | 3.4 | 21.0 | 15.2 |
労働時間が長い | 10.7 | 9.6 | 12.7 | 9.9 |
不払い残業がある・多い | 10.5 | 6.4 | 14.1 | 12.0 |
職務として行う医的な行為に不安がある | 9.8 | 6.4 | 17.0 | 7.9 |
雇用が不安定である | 8.6 | 8.5 | 7.8 | 9.2 |
仕事中のけがなどへの補償がない | 6.5 | 5.5 | 8.2 | 6.0 |
正規職員(正社員)になれない | 6.3 | 5.5 | 5.5 | 7.9 |
その他 | 3.3 | 3.4 | 3.4 | 3.1 |
労働条件・仕事への負担について特に悩み、不安・不満等は感じていない | 8.9 | 11.8 | 4.3 | 9.6 |
現場で働く職員の方々は、仕事に対してやりがいを求め、人と人とのつながりを大切に感じて仕事にいそしみながらも、人手不足からくる長時間労働や過重労働、そして低賃金に我慢し、その不満が日々積み重なり続ける。
このように、見えないところで、積もりに積もった不平不満が、将来大きなトラブルを引き起こすとは考えられないでしょうか?
つまり、労務トラブルを防ぐためには
1.社内ルールの整備
2.職場のコミュニケーション改善のための施策確立
にあると言えます。
労務トラブルの予防策
1.まずは社内ルールの整備から
社内ルールの基本は「就業規則」にあります。まずは、最新の法規に則った適切な就業規則の整備が最低条件です。また、その就業規則は、ひな形をそのままコピーするようなものではなく、事業所の実情にあったものでなければなりません。
加えて、想定されるトラブルについては、予め予防を講じた規則を整備しておきましょう。
2.職員の不安や不満を吸い上げる仕組みの確立
ただ、ルールを決めてもそれが適切に運用されていないと意味がありません。就業規則は整備してそれでおしまいではなく、現場の職員の方々に内容を周知徹底させることで、職場の真のルールとして活用させなければなりません。
加えて、上司と部下とのコミュニケーションを深める仕組み、例えば定期的な面接制度の導入や適切な評価制度の構築等により施設の理念や上司の想いを部下に伝え、部下の方の仕事や職場に対する不安を吸い上げることができれば、日々のストレスも軽減されることになり、労務トラブルのリスクもぐっと下がることになります。
起きてしまったらもう遅い?
ただ、社内ルールを整備し、コミュニケーションが密にとれる仕組みを確立した職場であっても、それでも労務トラブルは起こってしまう場合は、正直言ってあります。
では「労務問題が起こってしまってからはもう遅い」かと言うと、そんなことはありません。対処法が難しいことは事実ですが、適切に対応すれば、施設へのダメージを減らすことは可能です。
そのためには、何よりもはじめの一歩が非常に大切。初動を誤ってしまい、とりかえしのつかない労働問題に発展させないためにもまずは、人事労務に関する専門家にご相談してみてはいかがでしょうか。
当事務所では、「労務相談顧問」として、上記のような労務トラブルだけでなく「人事労務に対する悩み」を随時相談いただけます。
加えて、定期的に労働法改正情報や人事制度の事例などもご提供いたします。大きな案件のみならず、日常的な細かなものについても気軽に相談してください。
私どもは、どのような些細な悩みでも、親身にそして真摯に対応いたします。経営者の方々のよき相談相手として、そして最高のパートナーとしてご活用頂ければ幸いです。
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