「キャリアパス」とはどういったものか?介護報酬改定において加算要件となる「キャリアパス要件」とは?
キャリアパスとは、従業員が職業生活の中でどのように成長し、キャリアを築いていくかを示す道筋や計画のことを指します。特に介護福祉事業所や障害福祉事業所においては、職員のスキル向上や職位の明確化が重要であり、キャリアパスの整備はその基盤となります。
厚生労働省は、「平成21年度介護職員処遇改善『交付金』による事業」及び「平成24年度介護報酬改定に伴い『加算』で対応することとされた介護職員の処遇改善事業」について、その交付金および加算の要件として「キャリアパス要件の届出」を設けました。
これが、福祉業界に「キャリアパス」という概念が広がったきっかけかもしれません。
ここでいうキャリアパスとは、例えば新卒で入職して定年で退職するまで、その人がどのように職務(仕事上の責任や役割)を渡り歩いていくかというような、同一の組織内における仕事の道筋のことをいいます。どんな仕事をどれくらいの期間担当し、どの程度の習熟レベルに達すれば、どういうポストに就けるのかといった、キャリアを渡る道筋や基準・条件を明確化したもので、その人が最終的に目指すべきゴールまでの道筋のモデルだったり、専門性を極めるまでの基本的なパターンのことです。
ただ、一般的にキャリアパスとは、同一組織内に限らず、働く人がその職業人生を歩んでいくにあたっての仕事や経験の道筋であり、そこには個人の仕事観や動機、能力によって大きく変わってくるものです。同一組織内でのキャリアパスと個人のキャリアパスを一致させることが『適材適所』につながり、職員のモチベーションアップ、能力向上、そして継続的就労を促すこと(雇用の確保・雇用継続)につながるとも言われています。
キャリアパスの重要性
介護現場では、職員の専門性を高めることが質の高いケア提供につながります。キャリアパスの整備により、職員は自分のキャリアの方向性を明確にし、目標を持って働くことができます。これにより、職員のモチベーション向上や離職防止が期待され、結果として事業所全体のサービス向上につながります。
キャリアパスの構成要素
任用要件・賃金体系の整備
キャリアパスの基本となるのが、職位や職責、職務内容に応じた任用要件や賃金体系の整備です。具体的には、以下のような要素が含まれます。
任用要件の設定: 例えば、介護職員が特定の職位に昇進するためには、一定の経験年数や資格取得が必要とされること。
賃金体系の整備: 職位や職責に応じた明確な賃金制度を設け、昇給の基準を定めること。
研修の実施・キャリアアップ支援
職員のスキル向上を図るための研修やキャリアアップ支援もキャリアパスの重要な要素です。以下のような取り組みが考えられます。
研修の提供: 働きながら介護福祉士資格を取得するための実務者研修や、より高度な介護技術を学ぶための研修の提供。
キャリア相談の機会確保: 上位者や担当者による定期的なキャリア相談を実施し、職員のキャリア形成をサポートする。
昇給の仕組みの整備
経験や資格取得に応じた昇給の仕組みも、キャリアパスの一環として重要です。例えば、勤続年数や取得資格に基づいて定期的に昇給する制度を設けることで、職員は長期的に働く意欲を持つことができます。
職場環境等要件とキャリアパス
令和6年度の介護報酬改定においても、介護職員等処遇改善加算の取得要件として、キャリアパスの整備が当然に求められます。例えば以下のような要件が含まれます。
- 任用要件・賃金体系の整備: 職位ごとの任用要件や賃金体系を明確化し、就業規則等に定めて全職員に周知すること。
- 研修の実施・キャリアアップ支援: 職務内容に応じた研修の実施や、キャリア相談の機会を提供すること。
- 昇給の仕組みの整備: 賃金体系に基づく昇給の仕組みを整備し、定期的な昇給を実施すること。
キャリアパスの整備は、職員のスキル向上やモチベーションの維持、離職防止に重要な役割を果たします。特別養護老人ホームや福祉事業所の経営者や管理者は、キャリアパスの整備を通じて、職員が長く安心して働ける環境を提供することが求められます。これにより、事業所全体のサービス品質向上にもつながるでしょう。