「育児休業」の目的・主な特徴(取得期間・取得回数)は?育児休業にはどのような種類のものがあるの?

 概要

育児休業とは、労働者が子どもを養育するために一定期間休業することができる制度です。育児・介護休業法に基づいて定められており、原則として1歳未満の子どもを養育する男女労働者が取得できます
この制度は、仕事と子育ての両立を支援し、働きながら安心して子どもを育てられる環境を整備することを目的としています。近年、共働き世帯の増加や男性の育児参加促進の観点から、その重要性がますます高まっています。

育児休業の主な特徴

取得可能期間

1. 原則として、子どもが1歳に達するまでの期間
2. 保育所に入所できないなどの特別な事情がある場合、最長2歳まで延長可能
3. 父母がともに育児休業を取得する場合、子どもが1歳2カ月に達するまで取得可能(パパ・ママ育休プラス)

取得回数

1. 原則として子1人につき2回まで分割して取得可能
2. 特別な事情がある場合、再取得が認められることがある
 (他の子の産前・産後休業、新たな育児休業又は家族の介護休業の開始により育児休業が終了した場合で、新たな休業の対象だった子等が死亡等したとき等)

申請手続き

1. 原則として休業開始予定日の1カ月前までに書面等で事業主に申し出る
2. 事業主は育児休業の開始予定日および終了予定日等を書面等で労働者に通知

出生時育児休業(産後パパ育休)

2022年10月から導入された新しい制度で、子の出生後8週間以内に最大4週間(28日)の休業を取得できます。

1. 2回まで分割して取得可能
2. 労使協定を締結している場合、労働者の同意のもと休業中の就業が可能
3. 休業の申出期限は原則として休業開始予定日の2週間前まで

育児休業給付金

育児休業中の経済的支援として、一定の要件を満たす場合に雇用保険から育児休業給付金が支給されます。

1. 休業開始時の賃金の67%(180日経過後は50%)
2. 支給対象期間は原則として子どもが1歳に達するまで(最長2歳まで延長可能)

育児休業中の社会保険料の取り扱い

育児休業中は、申出により社会保険料(健康保険・厚生年金保険)の労働者負担分および事業主負担分が免除されます。

事業主の義務

1. 労働者の育児休業取得を拒むことはできない
2. 育児休業制度の周知と休業取得の意向確認を個別に行う
3. 育児休業取得者の雇用の継続に配慮し、不利益な取り扱いをしてはならない

特別な事情による育児休業期間の延長

以下のような特別な事情がある場合、育児休業期間を延長することができます。

1. 保育所等への入所を希望しているが、入所できない場合
2. 配偶者が死亡した場合や、負傷、疾病等により子の養育が困難になった場合
3. 配偶者が子と同居しなくなった場合(離婚等)
4. 子が負傷、疾病、障害により2週間以上にわたり世話を必要とする場合

パパ・ママ育休プラス

両親がともに育児休業を取得する場合、子どもが1歳2カ月に達するまでの間に、1年間休業することができる制度です。

1. 父母それぞれの休業期間の上限は1年間(母親の場合は産後休業期間を含む)
2. 両親での育児分担を促進し、女性の継続就業を支援する目的がある

育児休業の分割取得

2022年10月からの法改正により、育児休業の分割取得が可能になりました。

1. 原則として子1人につき2回まで分割して取得可能
2. 出生時育児休業(産後パパ育休)とは別に取得できる

育児休業中の就業

原則として育児休業中の就業は認められていませんが、出生時育児休業(産後パパ育休)については、労使協定を締結している場合に限り、労働者の同意のもとで就業が可能です。

育児休業取得の努力義務

事業主は、労働者の育児休業の申出や取得を妨げてはならず、むしろ取得しやすい環境づくりに努める義務があります。特に、従業員数1,000人超の企業では、男性の育児休業取得率の公表が義務付けられています。

育児休業取得率の現状と目標

1. 2023年3月、政府は男性の育児休業取得率の目標を引き上げ
- 2025年度:50%
- 2030年度:85%
2. 女性の育児休業取得率は高い水準を維持
3. 男性の取得率は増加傾向にあるものの、まだ目標には達していない

育児休業と育児時間

育児休業とは別に、3歳未満の子を養育する労働者は、1日の所定労働時間を原則として6時間まで短縮できる「育児時間」制度があります。この制度は、育児休業からの復帰後も仕事と育児の両立を支援するものです。

 

まとめ

育児休業制度は、少子化対策や働き方改革の観点から、現代社会において非常に重要な役割を果たしています。この制度を適切に活用することで、仕事と育児の両立が可能になり、労働者が家庭と仕事のバランスを取りながら安心して働くことができます。特に、近年の法改正によって男性の育児参加が推進され、男女問わず育児休業を取得しやすい環境が整備されつつあります。
事業主も、育児休業制度を積極的にサポートし、労働者が育児と仕事を両立できる環境を提供することで、職場全体の生産性向上や労働力の確保につながります。特に、育児休業を取得した労働者に対して不利益な扱いをしないことや、休業中のサポート体制を整えることが重要です。これにより、育児休業後のスムーズな職場復帰が可能となり、離職率の低減や社員の長期的な貢献を促進できます。
また、男性の育児休業取得率がまだ低い現状を考えると、企業の中で制度の周知や、育児休業を取得しやすい風土づくりが一層求められます。育児休業を活用することで、従業員のワークライフバランスを改善し、会社としても多様な働き方に対応した先進的な取り組みを進めることができるでしょう。

今後、育児休業制度はさらなる法改正や社会のニーズに合わせて進化していくことが予想されます。最新情報については、厚生労働省のウェブサイトや各都道府県労働局からの情報を常に確認し、適切な対応を心がけることが大切です。また、企業内での育児休業に関する相談窓口やサポート体制の整備も、労働者の安心感を高めるために重要です。
この制度を労働者と事業主が正しく理解し、適切に活用することで、個々の家庭の幸せだけでなく、社会全体の労働力維持や経済の安定にも寄与することが期待されます。

【参考リンク】
厚生労働省 育児休業・介護休業法について
厚生労働省 育児休業給付について
厚生労働省 育児休業特設サイト 

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