第10回雇用の分野における女性活躍推進に関する検討会が開催(2)|女性活躍と月経、不妊治療、更年期等の課題
前回に続き、今回も、令和6年7月17日に開催された第10回雇用の分野における女性活躍推進に関する検討会で示された「女性活躍推進法の現状と今後の方向性について報告書素案」について解説いたします。
中でも今回のコラムでは、女性が職場で活躍するため、月経、不妊治療、更年期などの健康課題に対する適切な制度利用が重要である点に焦点を当て、これらの課題に対する現状と対応策について詳述します。
1. 月経、不妊治療、更年期等に係る制度利用の現状等
女性特有の健康課題として、月経、不妊治療、更年期が挙げられます。
経済産業省の調査によると、女性従業員の約5割がこれらの健康課題により「勤務先で困った経験」があり、約4割が「職場であきらめなくてはならないと感じた経験」があると回答しています。
月経については、労働基準法第68条により「生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならない」と規定されています。
しかし、生理休暇の取得率は低く、理由としては「男性上司に申請しにくい」、「利用している人が少ないので申請しにくい」、「休んで迷惑をかけたくない」といったものが挙げられています。
不妊治療についても、職場で治療を受けていることを伝えないケースが多く、理由としては「伝えなくても支障がないから」、「周囲に気遣いをしてほしくないから」、「治療が上手くいかなかった時に職場に居づらいから」などがあります。
更年期については、新たな休暇制度の創設や柔軟な運用が進められていますが、実施率はまだ低い状況です。
2. 女性の就業との関係
健康状況は女性の働きやすさや仕事のパフォーマンスに大きな影響を与えます。
内閣府の調査によれば、月経不調がつらいときの仕事のパフォーマンスは通常の約52%に低下し、更年期障害がつらいときのパフォーマンスも約57%に低下するとされています。
女性が健康問題を抱えたまま働くことで、仕事の効率が落ちたり、ミスが増えたり、出勤するのがつらくなることがあり、結果としてプレゼンティーイズム(出勤しているが生産性が低い状態)を引き起こします。
また、これらの健康問題に適切に対処することで、女性の労働意欲や昇進意欲が高まり、キャリアの持続性が向上することが期待されます。
3. 今後の対応の方向性
今後、企業は女性特有の健康課題に対する理解と支援を強化する必要があります。具体的には以下の対策が考えられます。
- ヘルスリテラシーの向上:女性特有の健康課題に関する知識を深めるための教育や研修を実施し、男女問わず理解を促進する。
- 柔軟な勤務制度の導入:テレワークやフレックスタイム制度を活用し、女性が健康問題を抱えた際にも働きやすい環境を整備する。
- プライバシー保護の強化:月経や不妊治療、更年期の問題について、従業員が安心して相談できる体制を整え、プライバシーを保護する。
まとめ
当事務所では、女性が安心して働ける職場環境の整備をサポートしています。具体的な取組として、柔軟な勤務制度の導入に関するコンサルティングを提供しています。
また、女性特有の健康課題に対する支援策を導入することで、企業の生産性向上や従業員の定着率向上に寄与すると考えています。企業が女性の健康課題に真摯に向き合うことで、より多くの女性が活躍できる社会の実現を目指していきます。
【参考リンク】第10回雇用の分野における女性活躍推進に関する検討会
【参考資料】雇用の分野における女性活躍推進に関する検討会 報告書(素案)