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高齢社会対策を盛り込んだ報告書素案が示されました(1)|在職老齢年金制度の見直し等について

内閣府では、7月17日、第7回高齢社会対策大綱の策定のための検討会が開催され、在職老齢年金制度の見直し等高齢社会対策を盛り込んだ報告書素案が示されました。

この報告書素案は、次のような構成となっています。

第1部 基本的な考え方
第2部 生涯を通じて活躍できる環境の整備
第3部 地域において安心・安全に暮らせる社会の実現
第4部 推進体制の整備

今回は、第1部の基本的な考え方に焦点を当て、在職老齢年金制度の見直しについて詳しく解説します。

在職老齢年金制度の現状

在職老齢年金制度は、高齢者が一定の収入を得ながら年金を受け取ることができる制度です。しかし、現在の制度では収入に応じて年金額が減額される仕組みがあるため、高齢者の就労意欲を削ぐ要因となっていました。特に、収入が増えることで年金額が大幅に減額されるケースでは、働く意欲を削がれてしまうことが少なくありません。

この制度は、高齢者が一定の収入を得ながらも、生活の安定を図るために設けられたものです。しかし、年金減額の仕組みが逆に高齢者の就労を抑制する結果となり、労働市場における高齢者の参加を阻害しているという問題があります。

見直しの背景

日本の高齢化率は年々上昇しており、2023年時点で29.1%に達しています。2025年には「団塊の世代」が75歳以上に、また2040年には「団塊ジュニア世代」が65歳以上となるなど、65歳以上人口は2040年代前半でピークを迎えると推計されています。それ以降、65歳以上人口は減少に転じるものの、少子化の影響等により高齢化率は引き続き上昇を続け、2070年には38.7%に達すると見込まれています。高齢化率の上昇に伴い、生産年齢人口は2040年までに約1,200万人減少することが見込まれており、労働力不足や経済規模の縮小、地域社会の担い手の不足や高齢化が懸念されています。

一方、この20年間で、平均寿命と健康寿命は男女共に約3歳延伸し、65歳以上の就業者数は20年連続で前年を上回って過去最高となり、就業意欲の高まりも見られています。高齢期における体力的な若返り等を踏まえ、年齢に関わりなく、それぞれの意欲や能力に応じて、経済社会における様々な活動に参画する多様な機会を確保し、その能力を十分に発揮できる環境を創っていく重要性がますます高まっています。

また、高齢期における一人暮らしの人や認知症の人等の増加により、人と人との関係性やつながりの希薄化が進み、孤独・孤立の深刻化が懸念されており、地域社会のつながりや支え合いによる包摂的な社会の構築が求められています。

基本的な考え方

1.居場所や生きがいを持ち、年齢に関わりなく、希望に応じて活躍し続けられるウェルビーイングの高い社会の実現

あらゆる世代が年齢に関係なく活躍できる社会を構築することは、少子高齢化を始めとする急速な変化の中で、経済や地域社会において幅広い世代の担い手の確保を可能とし、経済社会を持続可能なものにするために重要です。そのためには、高齢期における体力的な若返りや長寿化が進む中で、希望に応じて自らの知識・経験を活かせる居場所を持ち、就労や社会活動など多様な活躍の機会が得られる環境を整備することが必要です。

2.全ての世代が支え合いながら、地域の様々な主体がつながり、安心・安全に暮らせる社会の構築

今後、高齢期における一人暮らしの人の増加や、加齢による身体機能・認知機能の変化を経験する人の増加が見込まれます。経済社会の急速な変化の中で、個々人が抱える多様で複合的な課題や生活上のニーズに対応するためには、地域社会を構成する様々な主体がそれぞれの役割を効果的に発揮し、互いのつながりを強化することが重要です。

3.加齢に伴う身体機能・認知機能の変化を始めとした個々人のニーズに応じたきめ細かな施策の展開

高齢期の長期化が進む中で、加齢による身体機能・認知機能の変化は個々人によって様々です。高齢期を一括りに捉えるのではなく、それぞれの世代の状況や生活上のニーズについて詳細に把握し、それに基づいて施策分野の壁を越えた実効性ある施策を展開することが求められます。

まとめと事務所の見解

在職老齢年金制度の見直しは、高齢者の就労を促進し、労働力不足を補うための重要な施策です。しかし、この見直しがもたらす影響は単なる労働力の補填に留まりません。高齢者が年金減額を気にせず働き続けることができる環境が整えば、労働市場における高齢者の参加が促進されるだけでなく、社会全体が新たな活力を得ることとなります。

まず、高齢者の就労促進は、若年層と高齢層の世代間の知識と技術の継承を可能にします。これにより、企業内部の技術力や業務ノウハウがより深まり、組織全体の競争力が強化されます。また、高齢者が持つ豊富な経験と知識は、若い世代にとって貴重な学びの機会となり、企業文化の成熟にも寄与します。

さらに、地域社会においても、高齢者の活躍は地域の結束力を高めます。高齢者が地域活動やボランティアに参加することで、地域コミュニティの活性化が図られ、孤独や孤立の問題が緩和されます。これにより、地域全体の生活の質が向上し、安心・安全な暮らしが実現されます。

当事務所では、今後も在職老齢年金制度に関する最新の情報を提供しています。企業の皆様には、この機会に制度の詳細を理解し、高齢者雇用の推進に役立てていただきたいと考えています。高齢者の知識と経験は、企業にとって貴重な資源です。その活用を促進することで、企業の競争力向上にも寄与することととも思います。

 

【参考リンク】内閣府 高齢社会対策大綱の策定のための検討会(第7回)
【参考資料】高齢社会対策大綱の策定のための検討会報告書素案

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