新しい資本主義実行計画の背景と中小企業への影響(3)

6月7日、第28回新しい資本主義実現会議が開催され、新しい資本主義実行計画の改訂案が取りまとめられました。11の大項目で構成され、労務関連の項目は主に次の2つに含まれています。

Ⅱ 中小・小規模企業等で働く労働者の賃上げ定着
Ⅲ 三位一体の労働市場改革の早期実行

前回の第2回目のコラムでは、非正規雇用労働者の処遇改善について解説しました。今回は、第3回目として、三位一体の労働市場改革の早期実行について詳しく解説します。

三位一体の労働市場改革の早期実行

労働市場の改革は、日本の経済成長と競争力強化において不可欠です。三位一体の労働市場改革とは、ジョブ型人事の導入、労働移動の円滑化、リ・スキリングによる能力向上支援の3つの柱を指します。

1. ジョブ型人事の導入

ジョブ型人事制度は、職務ごとに必要なスキルや経験を明確にし、それに基づいて人材を評価・配置する制度です。この制度の導入は、労働者のキャリア形成を支援し、企業の競争力を高めるために重要です。

  • ジョブ型人事指針の策定:

    • 政府はジョブ型人事の導入を支援するため、指針を策定しています。この指針は、企業がジョブ型人事を導入する際の具体的な手順やベストプラクティスを示しています。
  • 企業の実態に応じた役職定年・定年制の見直し:

    • ジョブ型人事の導入に合わせて、企業の実態に応じた役職定年や定年制の見直しが推奨されています。これにより、シニア層のスキルを有効活用し、労働市場全体の活性化が図られます。
  • スタートアップ等に関する裁量労働制等の運用明確化:

    • スタートアップや新技術・新商品の研究開発に従事する労働者に対する裁量労働制の運用が明確化されます。これにより、柔軟な働き方が可能となり、イノベーションが促進されます。
  • 解雇無効時の金銭救済制度の検討:

    • 労働者が不当解雇された場合の救済策として、金銭による解決制度が検討されています。これにより、労使間の紛争解決が迅速に行われることが期待されます。

2. 労働移動の円滑化

労働移動の円滑化は、労働市場の柔軟性を高め、労働者が適切な職場で働けるようにするために重要です。

  • 現場人材等の評価制度の構築とスキル取得支援:

    • 業界団体が策定するスキル標準に基づき、労働者のスキルを評価し、スキル取得を支援する制度が導入されます。これにより、労働者が自らのキャリアを積極的に形成できるようになります。
  • 官民の求人・求職情報の共有化によるキャリアコンサルティング機能の強化:

    • 官民連携で求人・求職情報を共有し、キャリアコンサルティングの質を向上させます。これにより、労働者が自分に適した職場を見つけやすくなります。
  • 失業給付制度の見直し:

    • 自己都合で離職した場合でも、一定の条件を満たせば失業給付を早期に受給できるよう、制度が見直されます。これにより、労働者の移動がスムーズに行われるようになります。

3. リ・スキリングによる能力向上支援

リ・スキリングは、労働者が新しいスキルを習得し、変化する労働市場に対応できるようにするための重要な施策です。

  • 先進的な取組みの横展開:

    • 先進的なリ・スキリングの取組みを他の企業や業界にも展開し、労働者のスキル向上を促進します。
  • 雇用調整助成金の見直し:

    • 労働者のスキル向上を支援するため、雇用調整助成金の制度が見直されます。これにより、企業が労働者のリ・スキリングを積極的に支援できるようになります。
  • リ・スキリングのプラットフォームの構築:

    • 労働者が簡単にリ・スキリングに取り組めるよう、政府や企業が協力してプラットフォームを構築します。

4.労働市場改革の関連事項

  • 外国人労働者との共生推進:

    • 外国人労働者の受け入れと共生を推進するための施策が導入されます。
  • フリーランスの取引適正化:

    • フリーランス労働者の取引環境を改善し、公正な取引を確保するための施策が進められます。
  • 女性活躍推進法の開示義務化のフォローアップ:

    • 女性の活躍を推進するため、企業の取り組みを開示する義務化が進められ、そのフォローアップが行われます。
  • 留学支援の強化:

    • 留学生支援の強化により、海外での学習機会を拡大します。
  • 高等教育費の負担軽減:

    • 高等教育費の負担軽減を図り、若者の教育機会を広げます。

これらの施策を通じて、労働市場全体の活性化と労働者のスキル向上が期待されます。

 

このように、三位一体の労働市場改革は、ジョブ型人事の導入、労働移動の円滑化、リ・スキリングの推進を中心に進められています。これにより、労働市場の柔軟性と労働者のスキル向上が期待されます。労働市場改革は日本経済の持続的な成長に不可欠であり、企業がこれに適応するための取り組みが求められます。

 

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