デフレ脱却と新たな経済ステージへ:骨太の方針2024(1)
6月11日、令和6年第8回経済財政諮問会議が開催され、「骨太の方針2024」の原案がまとめられました。日本経済は長い間デフレに苦しんできましたが、現在は賃上げの実現や企業の設備投資の増加など、前向きな動きが見られます。政府はこれを受け、デフレから完全に脱却し、持続可能な成長を実現するための政策を打ち出しました。
この「骨太の方針2024」は、日本経済をデフレから脱却させ、新しい成長型の経済ステージへと移行することを目指した政策方針です。今後の重要な政策に言及されているので、中小企業や福祉事業所の経営者の皆さんは、ぜひ一度お目通しされることをお勧めします。本コラムでは、その背景と目的、そして中小企業や福祉事業所にとっての具体的な影響について複数回に分けて解説していこうと思います。
成長型の新たな経済ステージへの移行
豊かさと幸せを実感できる持続可能な経済社会に向けて
経済・財政・社会保障の持続可能性を確保するためには、人口減少が本格化する2030年代以降も、実質1%を安定的に上回る成長を確保する必要があります。その上で、更に高い成長を実現するために、DX(デジタルトランスフォーメーション)やGX(グリーントランスフォーメーション)といった投資の拡大、欧米並みの生産性上昇率の引き上げ、高齢者の労働参加率の上昇ペース継続、女性の正規化促進などが必要です。
社会課題の解決を通じた持続的な経済成長の実現
賃上げの促進と定着
持続的な経済成長を実現するためには、賃上げの定着が不可欠です。政府は、労働市場改革や最低賃金の引き上げを通じて、賃金の底上げを図ります。また、企業が賃上げを行いやすい環境を整えるために、税制優遇や補助金の提供を行います。
中堅・中小企業の活性化
中小企業の多くは人手不足に悩んでいます。政府は、AIやロボットなどの自動化技術の導入を支援し、人手不足の解消を図ります。また、外国人労働者の受け入れを拡大し、多様な人材を活用することを促進します。
投資の拡大と革新技術の社会実装
デジタル技術の活用を通じて、様々な社会課題を解決します。具体的には、医療・介護のデジタル化(医療DX・介護DX)、教育のデジタル化(教育DX)、交通・物流のデジタル化(交通・物流DX)などを推進します。また、グリーン技術の導入を進め、エネルギー自給率の向上と脱炭素社会の実現を目指します。
まとめ
骨太の方針2024は、日本経済を新しい成長型経済ステージへと導くための政策です。しかし、その実現にはいくつかの課題も伴います。中小企業の経営者は、これらのメリットとデメリットを踏まえ、適切な舵取りが求められます。
まず、この方針のメリットとして、デジタル化とグリーン化が推進される点が挙げられます。デジタルトランスフォーメーション(DX)は、業務の効率化や新しいビジネスモデルの創出に直結します。また、環境配慮型の経営(GX)は、企業のイメージ向上だけでなく、長期的なコスト削減や新たな市場機会の創出に繋がります。
さらに、政府の支援策を活用することで、これらの取り組みを進めやすくなります。例えば、省力化投資の支援や事業承継の支援は、中小企業の経営基盤を強化し、持続可能な成長を後押しします。
一方で、デジタル化や環境対策に初期投資が必要となる点は大きな課題です。特に中小企業にとっては、これらの投資が負担となります。また、新しい技術やシステムの導入には、社員の教育やシステムの運用管理といった追加のリソースが必要となるため、計画的な取り組みが求められます。
他にも、賃上げや最低賃金の引き上げに対するプレッシャーもあります。これにより、人件費の増加が避けられず、経営に与える影響は大きいです。特に、利益率の低い企業にとっては、厳しい経営環境となることが予想されます。
これらのことを踏まえ、中小企業や福祉事業所は以下のように舵を切るべきかと思います。
計画的な投資: デジタル化や環境対策への投資は計画的に行い、長期的な視点でリターンを見据えた戦略を立てることが重要です。政府の支援策を最大限に活用し、初期投資の負担を軽減することを検討しましょう。
社員教育の強化: 新しい技術やシステムの導入に伴い、社員の教育が不可欠です。リスキリングやジョブ型人事制度の導入を進め、社員のスキルアップを図ることで、企業全体の競争力を高めることができます。
コスト管理と効率化: 賃上げや最低賃金の引き上げによるコスト増加に対応するため、業務プロセスの効率化やコスト管理を徹底しましょう。デジタル技術を活用した業務効率化や、省力化投資を積極的に進めることが重要です。
地域との連携強化: 地域社会との連携を強化し、地域課題の解決に貢献することで、地域と共に成長するビジネスモデルを構築しましょう。地域資源を活用したビジネスモデルの構築や、地域の特性を活かした取り組みを進めることが求められます。
【参考リンク】第8回会議資料:会議結果 令和6年