建設業における労働時間の現状と2024年問題:時短アンケート結果から
2024年4月、日本建設産業職員労働組合協議会(日建協)が発表した「2023 時短アンケート」の結果が公表されました。本調査は、建設業界で働く労働者の労働時間や意識を広く調査したもので、約19,000人の回答が集まりました。この結果から見えてきた労働時間の現状と、2024年問題について考察します。
労働時間の現状
2023年の所定外労働時間の平均は36.1時間で、前年より4時間減少しました。しかし、全産業平均の16.8時間と比べると依然として非常に長い時間です。特に外勤建築では52.1時間、外勤土木では46.6時間と高い数値が示されています。
長時間労働の理由
アンケートの結果、長時間労働の主な理由として以下の項目が挙げられました。
- 仕事の性格上、早出・残業が必要
- 配置の人員が少ない
- 発注者向け書類等が多い
特に外勤者の場合、適正な工期の設定と適切な人員配置が重要であることが明らかです。
労働時間の分布
月100時間以上の所定外労働をした組合員の割合は3.5%で、過労死ラインとされる80時間以上の労働をしている組合員も依然として多く存在します。これは、長時間労働が依然として深刻な問題であることを示しています。
休日・休暇の現状
2023年11月の休日取得状況を見ると、全体で9.2日の休日が取得されています。内勤では9.7日、外勤では8.9日であり、内勤者はカレンダー通りの休日を取得している一方、外勤者は土曜日や祝日の休日取得が少なく、1日休日出勤をしている状況が見られます。
2024年問題とは
「2024年問題」は、2024年4月に適用開始された時間外労働の上限規制が建設業界に与える影響を指します。これにより、月45時間以上の残業は年6回までという厳しい規制が設けられました。特に建設業界では、労働力不足が深刻化しており、この規制に対応するための省力化や効率化が求められています。
支援策と対応
政府や業界団体は、2024年問題に対応するために以下の支援策を打ち出しています。
- 効率化技術の導入支援
- 人材育成の強化
- 労働時間管理システムの導入
さらに、東京都では労働時間の短縮や働き方改革を支援するためのさまざまな施策を実施しています。詳細は以下のリンクからご確認ください。
まとめ
アンケート結果と法整備の乖離が大きい現状では、労働環境の改善は依然として厳しい状況です。特に建設業界では、長時間労働が常態化しているため、労働者の健康と安全管理は最優先と考えます。時間外労働の上限規制の遵守だけでなく、労働者の健康を守るための実質的な取り組みが不可欠です。
政府や業界団体の支援策に加えて、さらなる政策が求められます。例えば、公費の活用による効率化技術の導入支援等により、人材育成の強化策を充実させることも必要かと思います。こうした取り組みが、建設業界全体の労働環境を改善し、持続可能な労働環境の実現に寄与するのではないでしょうか。
しかし、企業経営者の皆様にとっては、こうした取り組みも一筋縄ではいかないのが現実かと思います。政府の支援には限界があり、現場の実情に即した柔軟な対応が求められることも多いでしょう。労働環境の改善に向けた努力を続ける中で、共に知恵を絞り合い、最善の解決策を模索していくことが重要ではないでしょうか。