東京労働局は令和7年度行政運営方針を発表しました|福祉事業所が押さえておくべき労務リスクと制度対応
東京労働局は令和7年度の行政運営方針を発表しました。
この方針は、都内の雇用や労働を取り巻く実情を踏まえ、今後1年間における行政の重点施策を明らかにするものです。特に、最低賃金の引き上げ、人材確保支援、ハラスメント対策、外国人雇用管理の徹底など、多岐にわたる分野が対象となっています。
本コラムでは、令和6年度との違いにも触れながら、福祉業界がとくに留意すべきポイントを中心に解説します。事業運営に直接影響を与える部分も多く、現場対応の見直しが求められる内容も含まれています。
【参考サイト】令和7年度東京労働局行政運営方針の掲載について
【参考資料】令和7年度 東京労働局行政運営方針
【参考資料】令和6年度 東京労働局行政運営方針
継続する取り組みと新たな視点
賃金引上げ支援は現場支援型へ
東京労働局は令和6年度の行政運営方針において、業務改善助成金の活用促進を明記し、中小・小規模事業者の生産性向上と賃上げを後押しする姿勢を示しました。令和7年度も同様に、助成金の活用や相談体制の強化を通じて、職場環境整備や働きやすさの向上が推進されています。
リ・スキリング支援:生成AI人材育成も本格化
デジタル分野におけるスキル取得支援が強化され、令和6年度からは生成AI分野を含む訓練修了者に“実践の場”を提供するモデル事業が実施されています。
福祉業界においても、ICT導入や業務効率化を見据えた人材育成のヒントとなる施策です。
福祉事業所がとくに注目すべき3つの視点
人材確保に向けた実務支援の強化
東京労働局は、介護・保育・医療分野に特化した求人支援、魅力発信支援、雇用管理支援を組み合わせることで、福祉業界における人材不足の緩和を目指しています。
「人材確保・就職支援コーナー」や「雇用管理セミナー」など、福祉特化型のマッチング支援体制が継続・強化されています。
外国人雇用に対する責任体制の明確化
東京労働局が令和6年度の方針で示したように、「外国人労働者雇用管理労務責任者講習モデル事業」が実施されており、雇用管理の実効性が問われる状況が続いています。
契約書の内容や生活支援、言語対応などの体制整備を、形式だけでなく“実態が伴うかどうか”という観点で見直すことが求められています。
行動災害と精神障害、二つの労災リスクへの対応
東京労働局は、令和6年度の行政運営方針で、小売業や福祉施設における「転倒」や「無理な動作による腰痛」などの作業行動起因による労働災害(いわゆる“行動災害”)の増加に触れ、その防止対策の重要性を強調しました。
第三次産業では全死傷災害の約7割を占めるともされ、作業動線の見直しや介助機器の導入が強く推奨されています。
また、精神障害に起因する労災請求についても、東京労働局が令和6年度に公表したデータによれば、前年比43.1%増の773件に達しており、過労死等事案の深刻化がうかがえます。
ハラスメント対策やメンタルヘルスケア体制の整備は、今や“選択的対応”ではなく“必須項目”となりつつあります。
社労士事務所としての見解
令和7年度の行政運営方針は、制度の周知にとどまらず「実行と徹底」に舵を切った内容が多く見受けられます。
とくに福祉現場では、人員不足、国際化、身体的・精神的リスクが複合的に存在しており、場当たり的な対応では限界があることを、私自身も日々痛感しています。
当事務所では、そうした現場の実態に寄り添いながら、「制度の理解」だけでなく「どう運用し、職場に落とし込むか」という視点を重視しています。
労務リスクへの備えと制度活用の両立が、経営の安定と職員定着に直結することを、多くのご支援先で感じております。
まとめ:知識だけでなく「対応力」が問われる一年へ
「最低賃金引上げ」「外国人雇用管理」「行動災害防止」「メンタル対策」など、多くの課題が福祉業界を取り巻いています。それぞれが制度として整備されている一方で、実行のためには職場への落とし込みと継続的な改善が不可欠です。
令和7年度は、“制度を使いこなせる現場”が、結果として職員定着やリスク回避につながる年になると感じています。
当事務所では、福祉業界に特化した支援実績をもとに、柔軟かつ丁寧なご提案を行っております。
小さな疑問からでも、お気軽にご相談ください。
【参考サイト】令和7年度東京労働局行政運営方針の掲載について
【参考資料】令和7年度 東京労働局行政運営方針
【参考資料】令和6年度 東京労働局行政運営方針