技能五輪全国大会に介護職種を追加へ——競技化がもたらす未来と経営リスク
厚生労働省は、2025年2月17日に開催された「技能五輪全国大会 介護職種の追加に向けた検討会」 において、2026年の技能五輪全国大会に介護職種を正式競技として追加する方針を決定しました。
これまで、技能五輪といえば「ものづくり」のイメージが強く、機械加工や建築、情報技術といった分野が中心でした。しかし、今回の決定により、介護の現場で求められる技能も「競技」として評価されることになります。これは、介護業界にとっても大きな意味を持つ出来事です。
この決定は、介護業界にとって「技能」が公に評価される転換点となるかもしれません。一方で、経営者や人事担当者にとっては「従来の人材育成・評価制度が時代遅れになりつつある」というシグナルとも捉えられます。つまり、これまでの「経験年数や資格に基づいた評価」では、優秀な人材を確保しにくくなる時代が迫っているのです。
では、この変化に対応しないままでいると、どのようなリスクが生じるのでしょうか?
介護人材が奪い合いになる時代——人材流出の危機
技能の「見える化」で採用市場はどう変わるのか?
介護職の技能が全国的な競技として可視化されることで、「スキルのある人材」に対する評価の基準が明確になります。
これまでの介護業界では、「資格を持っていれば誰でもできる仕事」と思われがちでしたが、技能五輪の導入によって「スキルの高い介護職員の市場価値」が一気に上がる可能性もでてきます。
この流れに適応できない事業所では、優秀な職員が待遇の良い職場へと流出する危険性が高まります。
例えば、こんなケースが考えられます。
ケース1:優秀な介護職員の離職
A施設では、長年働いているベテラン職員がいた。しかし、施設の人事評価制度は年功序列であり、技能を正しく評価する仕組みがなかった。一方、近隣のB施設では、技能五輪の基準を活用したスキル評価制度を導入し、能力に応じた昇給制度を整備。結果として、A施設の優秀な職員はB施設に転職し、施設のサービスレベルが低下してしまった。
こうした事態を防ぐためには、技能五輪がもたらす「スキル評価の変化」にいち早く対応し、自社の評価制度や賃金体系を見直すことが急務となります。
技能五輪がもたらす「経営リスク」とは?
技能五輪の導入により、企業経営にどのような影響が及ぶのでしょうか?
① 人材確保がますます困難に
技能五輪の導入によって、「介護のスキルが評価される時代」になると、スキルの高い介護職員ほど高待遇の職場へ移動する流れが加速します。
もし貴社が今の評価制度を維持したままでいると、「技能のある職員が離職し、未経験者ばかりが残る」という状況になりかねません。
② 職員の処遇改善を怠ると、採用競争で負ける
介護業界ではすでに「人材の奪い合い」が起きています。技能五輪の影響で、スキル評価が当たり前になった時、処遇の良い施設へと職員が流れるのは明らかです。
例えば、こんなケースも考えられます。
ケース2:採用競争で負ける事業所
C施設は、「人事考課制度、研修制度を導入しなくても大丈夫」と考えていた。しかし、近隣のD施設では、技能五輪を活用したスキルアップ研修を実施したり、スキルが評価される仕組みを整備。その結果、求職者の多くがD施設を選び、C施設は慢性的な人手不足に陥った。
このような状況を避けるためにも、「評価を取り入れた人事制度の導入」を早急に進める必要があります。
まとめ——リスクを回避するために
技能五輪全国大会に介護職種が追加されることは、介護業界にとって大きな変革の兆しです。
しかし、この変化に対応しないままでいると、
✅ 優秀な職員が流出する
✅ 採用市場で選ばれなくなる
✅ 競争力を失い、事業の存続が危うくなる
といった経営リスクが高まります。
「自社の人事評価制度は、この変化に対応できているだろうか?」
「今後の採用戦略をどのように進めればいいのか?」
少しでも不安を感じたら、今のうちに対策を講じるべきです。私たちは、介護業界に特化した労務管理の専門家として、人事制度設計のサポートを行っています。
「今の評価制度のままで大丈夫?」と感じたら、まずはご相談ください。
【参考サイト】「技能五輪全国大会 介護職種の追加に向けた検討会 」今後の方向性について
【参考資料】技能五輪全国大会への介護職種の追加に向けた方向性について