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処遇改善加算の一本化に向けた経過措置と職場環境等要件(3)

生産性向上(業務改善及び働く環境改善)のための取組

イントロダクション

令和6年度の介護報酬改定により、介護職員の処遇改善加算が一本化されることが決定しました。この改定は、特別養護老人ホームや福祉事業所の経営者にとって非常に重要な意味を持ちます。本記事では、この改定に伴う経過措置と、令和7年度以降に求められる職場環境等要件のうち、「生産性向上(業務改善及び働く環境改善)のための取組」について詳しく解説します。

処遇改善加算の一本化と経過措置

介護職員の処遇改善加算は、平成24年度の介護報酬改定から導入され、以降、特定処遇改善加算やベースアップ等支援加算などが追加されてきました。しかし、複数の加算制度が存在するため、制度が複雑化し、事業者の事務負担が増加していました。このため、令和6年度の改定では、これらの加算を一本化し、「介護職員等処遇改善加算」(以下「新加算」)が創設されることとなりました。

経過措置の概要

新加算の導入に伴い、旧加算から新加算への移行において、事業者が円滑に適応できるよう、経過措置が設けられています。令和6年5月31日時点で旧加算を算定している事業者は、令和6年度末まで経過措置区分として新加算を算定することが可能です。また、令和6年度中は職場環境等要件の適用が猶予されるため、事業者は柔軟に対応できます。

職場環境等要件の重要性

令和7年度以降、介護職員の働きやすさを向上させるための具体的な取り組みが求められます。これらの要件を満たすことで、新加算を適用することができます。以下では、「生産性向上(業務改善及び働く環境改善)のための取組」について詳述します。

「事務担当者向け・詳細説明資料」より

生産性向上のための具体的な取り組み

1.生産性向上推進体制の構築⑰

厚生労働省の「生産性向上ガイドライン」に基づき、業務改善活動の体制を整備します。具体的には、委員会やプロジェクトチームを立ち上げ、生産性向上に向けた計画を策定し、実施します。
生産性向上ガイドラインについては、厚生労働省サイト「介護分野の生産性向上 ~お知らせ~」を参考にしてください。
また、「施設サービス」「居宅サービス」については「改善活動の進め方、具体的な手順やポイント」「取組事例」等が記されたを詳細なガイドラインも公表されています。

このガイドラインでは、この改善活動の準備として、「進めるコツ」として以下のようなことが事例として挙げられています。

1.改善活動をするプロジェクトチームを立ち上げプロジェクトリーダーを決める
プロジェクトチームの結成は短期集中型のプロジェクトを最後までやり切るためには必要不可欠です。プロジェクトメンバーは現場のマネジメント層および現場の中核人材を中心に、現状に問題意識を持ち、改善活動に前向きに取り組むことができる職員を選抜し、それぞれの位置づけや役割分担を明確にします。また、チームを組むことが難しい場合は、まず職員で集まり、それぞれの職員が考える課題を伝え合うことから始めましょう。

2.経営層から施設全体への取組開始のキックオフ宣言をする
プロジェクトは経営層からマネジメント層、そして現場職員までがその目的を理解・納得したうえで、一枚岩となって取り組む必要があります。そのため、プロジェクトのキックオフにおいては、経営者から全職員にプロジェクトで目指すものを明確に伝えます。
3.外部の研修会を活用する
施設の中だけで活動に取り組む余裕がない場合には、外部の研修会に参加して視野を広げたり、コンサルタントなど第三者の力を借りて進めることもできます。

なお、この「生産性向上推進体制の構築⑰」要件については、加算ⅠまたはⅡを取得する際は必須の要件になります。

2.現場の課題の見える化⑱

課題の抽出や業務時間調査を行い、現場の問題点を見える化します。これにより、業務改善の必要な部分を明確にし、具体的な対策を講じることが可能になります。
詳しい手順については厚生労働省の「介護分野における生産性向上ポータルサイト」内「介護分野における生産性向上の取組の進め方」が参考になるかと思います。
加えて、本サイト内の「手順2 現場の課題を見える化しよう」(動画)はぜひ一度ご覧になってみてください。

なお、この「現場の課題の見える化⑱」要件についても、上記「生産性向上推進体制の構築⑰」同様、加算ⅠまたはⅡを取得する際、必須の要件になります。

3.5S活動の実践⑲

整理、整頓、清掃、清潔、躾の5S活動を実践することで、職場環境の整備を行います。これにより、業務効率が向上し、職員の働きやすさも改善されます。

要素概要介護現場における事例
整理要るものと要らないものをはっきり分けて、要らないものを捨てる保存年限が超えている書類を捨てる
整頓三定(定置・定品・定量)
手元化(探す手間を省く)
紙オムツを決まった棚に収納し (定置・定品)、
棚には常に5個 (定量)あるような状態を維持し、
取り出しやすく配置する(手元化)
清掃すぐ使えるように常に点検する転倒防止のために常に動線上をきれいにし、水滴などで滑らないようにする
清潔整理・整頓・ 清掃(3S)を 維持する
清潔と不潔を分ける
3Sが実行できているかチェックリストで確認する
使用済みオムツを素手で触らない
決められたことを、いつも正しく守る習慣をつける分からないことがあったとき、OJTの仕組みの中でトレーナーに尋ねることや手順書に立ち返る癖をつける

介護サービス事業(施設サービス分)における生産性向上に資するガイドラインより

4.業務手順書の作成⑳

業務手順書を作成し、標準化された手順に基づいて作業を進めることで、情報共有の円滑化と作業負担の軽減を図ります。業務手順書は定期的に見直しを行い、常に最新の情報を反映させます。

5.ICTの活用:介護ソフト(記録、情報共有、請求業務転記が不要なもの。等)、タブレット端末、スマートフォン端末等の導入㉑

タブレット端末やインカムなどのICT機器を活用し、業務量の削減と効率化を図ります。これにより、職員間の連携がスムーズになり、業務のスピードが向上します。

6.介護ロボットやセンサーの導入㉒

介護ロボットやセンサーなどの先進技術を導入することで、介護業務の効率化と職員の負担軽減を実現します。これにより、職員の腰痛などの身体的負担も軽減されます。

7.業務内容の明確化と役割分担。間接業務に対する介護助手の活用や外注化㉓

介護職員がケアに集中できるよう、役割分担を明確にします。介護助手や事務職員との連携を強化し、各自が専門業務に専念できる環境を整えます。

8.職場環境の改善に向けた協働化㉔

各種委員会の共同設置や各種指針・計画の共同策定、物品の共同購入などにより、職場環境の改善を図ります。これにより、コストの削減と効率的な運営が可能になります。
※小規模事業所については、この「8.職場環境の改善に向けた協働化㉔」を実施していれば、「生産性向上(業務改善及び働く環境改善)のための取組」が満たされることとなります。

 

まとめ

令和6年度の介護報酬改定に伴う処遇改善加算の一本化と経過措置、令和7年度以降に求められる職場環境等要件について理解することは、特別養護老人ホームや福祉事業所の経営者にとって非常に重要です。特に、「生産性向上(業務改善及び働く環境改善)のための取組」の具体的な実施が、業務の効率化と職員の働きやすさの向上に直結します。
また、この「生産性向上のための取組」については、令和7年度の加算取得のためには必須項目があることにも注意が必要です。
「生産性向上のための業務改善の取組」 の区分の取組 については、厚生労働省 の 「介護分野における生産性向上ポータルサイト」が大変参照になるため、ぜひ一度ご一読されることをお勧めいたします。

当事務所では、労務相談顧問の一環として、生産性向上(業務改善及び働く環境改善)のための取組に向けた相談や指導・助言も承っております。
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【参考サイト】厚生労働省 介護分野の生産性向上 ~お知らせ~
【参考サイト】厚生労働省 「介護分野における生産性向上ポータルサイト」
【参考資料】介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン[施設サービス ガイドライン(令和2年度改訂版)]
【参考資料】介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン[居宅サービス ガイドライン(令和4年度改訂版)]

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