処遇改善加算の一本化に向けた経過措置と職場環境等要件(1)
「入職促進に向けた取り組み」および「資質の向上やキャリアアップに向けた支援」
イントロダクション
令和6年度の介護報酬改定において、介護職員の処遇改善加算が一本化されることが決定しました。この改定は、特別養護老人ホームや福祉事業所の経営者にとって非常に重要です。本記事では、この改定に伴う経過措置と、令和7年度以降に求められる職場環境等要件のうち、「入職促進に向けた取り組み」と「資質の向上やキャリアアップに向けた支援」について詳しく解説します。
処遇改善加算の一本化と経過措置
介護職員の処遇改善加算は、平成24年度の介護報酬改定から導入され、以降、特定処遇改善加算やベースアップ等支援加算などが追加されてきました。しかし、複数の加算制度が存在することから、制度が複雑化し、事業者の事務負担が増加していました。このため、令和6年度の改定では、これらの加算を一本化し、「介護職員等処遇改善加算」(以下「新加算」)が創設されることとなりました。
経過措置の概要
新加算の導入に伴い、旧加算から新加算への移行において、事業者が円滑に適応できるよう、経過措置が設けられています。令和6年5月31日時点で旧加算を算定している事業者は、令和6年度末まで経過措置区分として新加算を算定することが可能です。また、令和6年度中は職場環境等要件の適用が猶予されるため、事業者は柔軟に対応できます。
職場環境等要件の重要性
令和7年度以降、介護職員の働きやすさを向上させるための具体的な取り組みが求められます。これらの要件を満たすことで、新加算を適用することができます。以下では、「入職促進に向けた取り組み」と「資質の向上やキャリアアップに向けた支援」について詳述します。
入職促進に向けた取り組み
1.経営理念や人材育成方針の明確化①
法人や事業所の経営理念、ケア方針、人材育成方針、その実現のための施策・仕組みを明確化することが求められます。これにより、職員一人ひとりが自らの役割や目標を明確に持ち、仕事に対するモチベーションが向上します。
2.事業者の共同による制度構築②
採用、人事ローテーション、研修のための制度を共同で構築することで、地域全体での介護人材の確保と育成が可能になります。特に中小規模の事業所にとって、共同での制度構築は大きな効果を発揮します。
3.幅広い採用の仕組み③
他産業からの転職者、主婦層、中高年齢者など、経験や資格にこだわらない幅広い採用の仕組みを構築することが重要です。これにより、多様な人材が介護現場に参入しやすくなります。
4.職業魅力度向上の取り組み④
職業体験の受け入れや地域行事への参加、主催などを通じて、介護職の魅力を広く伝える取り組みを実施することが推奨されます。地域住民との交流を深めることで、地域からの信頼を得ることも可能です。
資質の向上やキャリアアップに向けた支援
1.介護福祉士取得支援⑤
働きながら介護福祉士を目指す職員に対する実務者研修受講支援や、専門性の高い介護技術を取得するための研修支援を行うことが求められます。これにより、職員の専門性が向上し、質の高い介護サービスが提供できます。
2.研修と人事考課の連動⑥
研修の受講やキャリア段位制度と人事考課を連動させることで、職員の成長を促し、モチベーションを高めることができます。研修受講の成果が昇進や昇給に直結する仕組みを整えることが重要です。
3.エルダー・メンター制度⑦
新人職員に対して、仕事やメンタル面でのサポートを行うエルダー・メンター制度を導入することが推奨されます。これにより、新人職員が早期に職場に適応しやすくなります。
4.キャリア面談⑧
上位者や担当者によるキャリア面談を定期的に実施し、職員一人ひとりのキャリアアップや働き方に関する相談機会を提供することが重要です。これにより、職員の働きやすさや職場への定着率が向上します。
まとめ
令和6年度の介護報酬改定に伴う処遇改善加算の一本化と経過措置、令和7年度以降に求められる職場環境等要件について理解することは、特別養護老人ホームや福祉事業所の経営者にとって非常に重要です。特に、「入職促進に向けた取り組み」と「資質の向上やキャリアアップに向けた支援」の具体的な実施が、職員の働きやすさと介護サービスの質の向上に直結します。
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