令和6年度介護報酬改定における処遇改善加算の一本化:福祉事業所経営者への重要なポイント
令和6年度の介護報酬改定において、介護職員の処遇改善加算が一本化されることが決定しました。この改定は、特別養護老人ホームや福祉事業所の経営者にとって非常に重要な意味を持ちます。この記事では、処遇改善加算の一本化について詳しく解説し、経営者として知っておくべきポイントを整理します。
処遇改善加算の背景
介護職員の処遇改善加算は、介護職員の賃金改善を目的に導入されました。平成24年度の介護報酬改定から始まり、その後も特定処遇改善加算やベースアップ等支援加算などが追加され、複雑な制度になっていました。しかし、介護現場からは制度の簡素化と一貫性のある運用が求められていました。
改定の目的と基本的考え方
令和6年度の介護報酬改定では、旧3加算(旧処遇改善加算、旧特定処遇改善加算、旧ベースアップ等支援加算)を一本化し、新たに「介護職員等処遇改善加算」(以下「新加算」)を創設することとなりました。この改定の目的は以下の通りです:
- 事業者の事務負担の軽減:賃金改善や申請に係る事務手続きを簡素化
- 利用者に分かりやすい制度:制度の一本化により、利用者の理解を得やすくした
- 加算原資の柔軟な配分:事業所全体での原資の配分を柔軟にした
新加算の主な要件と改定内容
新加算は、旧3加算の要件を組み合わせる形で一本化されます。具体的には、以下の要件を満たすことが求められます:
- キャリアパス要件:介護職員の任用要件や賃金体系の整備、研修の実施などを含む。
- 月額賃金改善要件:賃金改善の一部を基本給や毎月支払われる手当に充てること。
- 職場環境等要件:職場環境の改善に向けた具体的な取り組みの実施。
新加算は、令和6年6月から施行され、加算率も引き上げられます。令和6年度には2.5%、令和7年度には2.0%のベースアップを目指すこととされています。
経過措置と事務手順
改定に伴う経過措置として、令和6年5月31日時点で旧3加算を算定している事業所は、令和6年度末まで経過措置区分として新加算を算定できます。また、令和6年度中は職場環境等要件の適用が猶予されるため、この点においては事業者は柔軟に対応することが可能です。
体制届出:新加算を算定するためには、指定の期日までに体制届出を行う必要があります。居宅系サービスの場合は算定を開始する月の前月15日、施設系サービスの場合は当月1日までに提出します。
処遇改善計画書:新加算を算定するには、処遇改善計画書を作成し、当該事業年度の前々月の末日までに提出します。令和6年度の特例として、旧3加算の算定に関する計画書の提出期日は令和6年4月15日とされています。
実績報告書:新加算を算定した事業者は、実績報告書を作成し、各事業年度の最終の加算支払月の翌々月の末日までに提出する必要があります。
特別事情届出書
事業の継続を図るために賃金水準を引き下げながら賃金改善を行う場合、特別事情届出書を提出する必要があります。これには、法人の収支状況、賃金水準の引下げ内容、労使合意の詳細などを記載します。
周知と確認
新加算を算定する事業者は、賃金改善の方法を職員に周知するとともに、就業規則等の内容も周知する必要があります。また、都道府県知事等は、事業者が算定要件を満たしていることを確認し、適切な運用を支援します。
まとめ
令和6年度の介護報酬改定における処遇改善加算の一本化は、福祉事業所の経営にとって大きな変革となります。事業者は、今回の改定内容を十分に理解し、必要な手続きを適切に行うことで、介護職員の処遇改善を確実に実施し、事業運営を安定させることが求められます。当社労士事務所は、このような改定に伴う事務手続きの支援を行い、事業者の負担軽減とスムーズな運営をサポートいたします。