福祉業界におけるキャリアカウンセリングの重要性──職員定着と職場環境の向上へ
福祉業界では、利用者やその家族に対して傾聴の姿勢を持つことが当たり前とされています。しかし、その傾聴スキルが、職員同士では十分に活かされていないのが現実です。
その結果、ハラスメント相談が後を絶たず、メンタルヘルス不調による離職が業界の大きな課題となっています。
「忙しいから仕方ない」「福祉業界ではよくあること」と見過ごしていませんか?
見て見ぬふりをしている間に、職員のストレスは限界を超え、優秀な人材が次々と離れていくかもしれません。
本記事では、福祉業界におけるキャリアカウンセリングの役割とその効果について、実際のデータを交えながら詳しく解説します。
福祉業界におけるハラスメントとメンタルヘルスの実態
職場内ハラスメントの現状
「ウチは大丈夫」と思っていませんか?
しかし、データは「職場の人間関係が原因で離職する介護職員が最も多い」ことを示しています。
- 介護職員の47.5%が「職場でパワーハラスメントを受けた経験がある」と回答【「公益社団法人日本介護福祉士会」調査より】。
- 介護労働安定センターの「令和5年度 介護労働実態調査」によると、介護職員の離職理由として「職場の人間関係に問題があったため」が34.3%と最も多く、特に上司からのパワーハラスメントが主な要因とされている。
- また、「法人や施設・事業所の理念や運営のあり方に不満があったため」という理由での離職も26.3%と高く、職場の組織文化への不満が離職の大きな要因になっている【介護労働安定センター 介護労働実態調査より】。
「ちょっとした冗談」「昔はこれが当たり前だった」——
そうした職場の空気が、職員の心をすり減らし、離職へと追い込んでいる現実に目を向けるべきです。
メンタルヘルス問題と離職リスク
「うちの職員はみんな頑張っている」と思っていませんか?実は、職員は「頑張らなければいけない環境」に追い詰められている可能性があります。
- メンタルヘルス不調による長期休職・退職者がいる事業所の割合は17.6%(全産業平均13.5%)【厚生労働省2023年度労働安全衛生調査より】
- メンタルヘルス対策を実施している事業所は63.8%に留まり、約4割の施設で十分な対策が取られていない【厚生労働省2023年度労働安全衛生調査より】
「離職者が出てからでは遅い」のです。
「最近元気がないな」「ミスが増えているな」——そんな小さなサインを見逃していませんか?
キャリアカウンセリングの役割
職員の成長を支援する
キャリアカウンセリングとは、職員が自身のキャリアについて考え、成長を支援する対話の場です。
「ただ働くだけ」になってしまっている職員に、「この仕事を続ける意味」「ここで働く価値」を再認識してもらう機会をつくることで、離職防止と職員のエンゲージメント向上につながります。
キャリアカウンセリングの導入効果
キャリアカウンセリングを導入すると、以下のような具体的な効果が期待できます。
✅ 離職率の低下:職員が将来を見据えた働き方を考えることで、転職への不安が軽減される。
✅ ハラスメントの抑制:管理職やベテラン職員が適切な対人スキルを習得し、職場内のコミュニケーションが円滑化。
✅ モチベーション向上:職員の目標設定をサポートし、働く意欲を引き出す。
✅ 職場環境の改善:傾聴の文化を根付かせることで、職員同士の信頼関係が強化される。
カウンセリングの基本的態度(ロジャースの3原則)
- 純粋性(自己一致):防衛的にならず、率直な態度で相手に向き合う。
- 受容的態度:批判や否定をせず、相手を尊重する。
- 共感的理解:話し手の立場に立ち、表面的な同調ではなく、深い理解を示す。
ラポール(信頼関係)構築の技法
アレン・アイビィのマイクロカウンセリング技法を活用すると、信頼関係の構築がスムーズになります。
かかわり行動:
- 視線を合わせる
- 身体言語に配慮する(うなずき・姿勢)
- 声のトーン・スピードを調整する
- 話題を急に変えず、言語的追跡を行う
基本的傾聴の連鎖:
- 開かれた質問・閉じられた質問を適切に使い分ける。
- クライエント観察技法で、相手の言語・非言語コミュニケーションを理解する。
- はげまし・いいかえ・要約を通じて会話を活性化する。
- 感情の反映によって、話し手の内面に寄り添う。
これらのスキルは、経営者や管理職が職員との面談に活用することでも効果を発揮します。
キャリアカウンセリングの導入方法
「忙しくてできない」という壁を乗り越えるには?
キャリアカウンセリングの導入にあたって、「忙しくてできない」という意見がよく聞かれます。
しかし、小さく始める工夫をすれば、負担を増やさずに職場に定着させることが可能です。
手軽に始められる施策
- 月1回15分の「キャリア対話タイム」を設ける
- 「キャリアシート」記入→短時間の面談実施
- 希望者のみの「お試しカウンセリング枠」を設置
- 管理職向けの「傾聴研修」を導入
こうした施策により、職員のキャリア意識を高めると同時に、ハラスメントやメンタルヘルスの問題を未然に防ぐことができます。
まずは「聴くこと」から始めてみませんか?
「なぜ、利用者様・ご家族にはできるのに、職場ではできないのか?」
この問いを考えることが、キャリアカウンセリングの第一歩です。
職場内の「聴く力」を育てることで、職員のモチベーション向上・離職防止・組織活性化が実現できます。
まずは、職員の声を聴くことから始めてみませんか?
職場環境の改善に向けた第一歩を踏み出しましょう!
「ハラスメント対策はしているつもりだった」
「忙しくて職員の悩みをじっくり聞く時間がなかった」
そうしている間にも、貴重な職員が静かに辞める準備を進めているかもしれません。
当事務所では、福祉業界に精通した社会保険労務士が、職場環境改善のためのサポートを提供しています。具体的には、
✅ キャリアカウンセリングの仕組みづくり
✅ 管理職向けの「傾聴スキル」研修
✅ 職員のエンゲージメント向上施策の提案
✅ メンタルヘルス対策の強化支援
など、施設の状況に応じた最適なプランをご提案いたします。
当事務所の所長は、『国家資格キャリアコンサルタント』であり、『CDA(キャリアディベロップメントアドバイザー)資格保持者』、『ハラスメント防止コンサルタント』でもあります。
職員のキャリア形成支援、職場環境の改善、人材定着に関する専門知識を有し、経営者の皆様を強力にサポートします。
「職員の離職を防ぎ、働きやすい職場をつくりたい」
「ハラスメントやメンタルヘルスの課題を解決したい」
そうお考えの経営者の方は、ぜひ一度ご相談ください。初回相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください!