「辞めないで」が言えない?時短社員の退職問題から考える、これからの人材戦略
「先生、どうしたらいいでしょうか……?」
ある企業の人事担当者からの電話でした。焦りのにじむ声。その理由は、長年勤務している時短勤務のパート社員が、妊娠を理由に退職を申し出たというのです。
「彼女はとても優秀なんです。でも、子どもを保育園に預けられないから、仕事を辞めるしかないと……。」
企業にとって、経験豊富な社員が突然辞めるのは大きな損失です。しかし、さらに問題なのは、このケースが「よくある話」になってしまっていることです。日本全国で同じような問題が繰り返されていますが、「仕方ない」と片付けていませんか?
保育園の“点数(指数)制度”が生む致命的なジレンマ
「時短勤務だと、保育園の点数(指数)が足りずに入れない」——この言葉を何度聞いたことでしょうか。
多くの自治体では、保育園の入所選考において、親の勤務時間が長いほど加点される仕組みを採用しています。これはフルタイムで働く親には有利ですが、時短勤務やパート社員にとっては不利。つまり、育児と仕事の両立を支えたいはずの制度が、実は両立を阻害する要因になっているのです。
「子どもが入園できないから、フルタイムに戻すしかない。」 「でも、今の生活ではフルタイムは難しい。」
このジレンマの中で、働き続けたい意思があっても、結果として退職を選ばざるを得ない人が後を絶ちません。しかし、それで企業は本当に良いのでしょうか?
企業にとっての“機会損失”——気付かぬうちに組織が弱体化
企業の視点で考えれば、これは決して他人事ではありません。
多くの労働者が育児と仕事の両立に困難を感じています。正社員の働く母親の9割が、仕事と子育ての両立に何らかの困難を抱えており、特に子どもが2歳以下の場合はおよそ95%に上るといった調査結果もあります。
育児と仕事の両立が難しいと感じる労働者の多くは、時短勤務が認められても退職を検討する可能性も高いのではないでしょうか。せっかく戦力となった社員を失い、再び採用・教育コストをかけなければならなくなるかもしれません。
さらに、少子高齢化が進む日本では、企業が多様な働き方を提供できなければ、優秀な人材の確保はますます難しくなります。
「うちは正社員が中心だから関係ない。」
本当にそうでしょうか?時短勤務やパート社員の離職が進んでいるということは、貴社にとって将来的な人手不足リスクがすぐそこに迫っているということです。
見過ごせない、企業が直面する3つの課題
「また一人、いい人材が...」
時短勤務者に限ったことではありませんが、従業員の退職は、企業に大きな影響をもたらします:
- 失われる経験値
その社員が積み上げてきた経験、専門知識、社内ネットワーク。これらは簡単には取り戻せません。 - 膨らむコスト
新しい人材の採用、教育にかかる費用。さらに、業務の引き継ぎ期間中の生産性低下も見過ごせません。 - 下がるモチベーション
「自分も同じ立場になったら...」という不安が、他の社員の士気に影響を与えかねません。
千差万別な職場の課題
「理想的な働き方改革は分かるけど、うちには難しい...」特に、介護・福祉施設や中小企業の皆様から、よくこのような声を伺います。
実は、この「難しさ」は各事業所によって大きく異なります。
- 従業員の年齢層
- 勤務形態
- 設備環境
- サービス提供時間
- 地域性
これらが複雑に絡み合って、それぞれの職場ならではの課題を生み出しているのです。
だからこそ、私たちが大切にしているのは「決め打ち」の解決策を提示することではありません。
各事業所の:
- 現状をしっかりと分析すること
- 固有の課題を明確化すること
- 実現可能な選択肢を整理すること
- 優先順位をつけて段階的に進めること
これらのステップを丁寧に進めることで、御社にとって最適な解決策が見えてきます。
これからの時代に求められる視点
人材不足が深刻化する中、今、私たちに求められているのは:
- できることから始める姿勢
完璧な制度でなくても、一つひとつ課題に向き合う姿勢が重要です。 - 対話の機会を増やす
社員一人ひとりの状況や希望を知ることから、新しいアイデアが生まれるかもしれません。 - チームで支え合う文化づくり
互いの状況を理解し、助け合える職場環境は、結果として全員の働きやすさにつながります。
まとめ
私たちの事務所には、多くの企業経営者や人事担当者から相談が寄せられます。その中で共通するのは、「社員に長く働いてもらいたいが、現状の制度では難しい」という悩みです。
この問題は、個々の社員の選択の問題ではなく、企業が持続的に成長するための環境整備の問題なのです。
「福利厚生としてやるのではなく、企業の生存戦略として考えるべきです。」
これは、私がクライアントに常に伝えていることです。
このまま何も手を打たなければ、貴社は優秀な人材を確実に失い、気づいたときには人手不足に苦しむことになります。
当事務所では、介護・福祉施設や中小企業の皆様の実情に寄り添い、
- 現状分析
- 課題の整理
- 実現可能な施策の検討
を、一緒に進めていきます。完璧な解決策はないかもしれません。でも、一緒に考え、一緒に歩んでいく。 それが当事務所のモットーです。
御社の「これから」を、一緒に考えていきませんか?
「働くか、辞めるか」の二択ではなく、「どうすれば働き続けられるか」を考えることが、これからの企業の在り方です。
人材の確保が難しくなる中、企業が多様な働き方を受け入れることは、競争力の向上につながります。今、経営者が問われているのは、「社員の育児問題をどう解決するか」ではなく、「どうすれば、社員が安心して働き続けられるか」です。
「うちの会社は大丈夫」と思っている経営者こそ、一度立ち止まり、未来の企業戦略を見直すべきです。
当事務所では、企業の成長を支える労務サポートを提供しています。育児と仕事の両立を支援する制度設計や、企業に最適な働き方改革のアドバイスを行っています。
「このままで本当に大丈夫か?」と少しでも感じたら、今すぐご相談ください。時間が経てば経つほど、貴社にとって取り返しのつかない損失になる可能性があります。
貴社の人材を最大限に活かし、企業の競争力を高めるためのご相談は、今すぐお問い合わせください。