「常時介護を必要とする状態」基準が見直しへ。企業の実務への影響とは?

企業の経営者や人事担当者の皆様、介護休業制度の対応を後回しにしていませんか?

これまでに何度かコラムでも取り上げてきましたが、令和7年1月28日、厚生労働省は 「介護休業制度等における『常時介護を必要とする状態に関する判断基準』の見直しに関する研究会」(座長:佐藤博樹東京大学名誉教授)において、報告書が取りまとめ、それを公表しました。

【参考リンク】介護休業制度等における「常時介護を必要とする状態に関する判断基準」の見直しに関する研究会報告書を公表します

この報告書では、介護休業の対象となる 「常時介護を必要とする状態」の判断基準が変更される ことが示されており、新たに別添1の「常時介護を必要とする状態に関する判断基準」が適用される予定です。特に、障害児・者や医療的ケア児・者を介護するケース においても適用しやすくなるよう見直されており、企業にとっても実務上の対応が求められます。

これにより、介護休業の対象が明確化し、従業員への対応もも大きく変わる企業もあるでしょう。しかし、対応を怠ると、労務トラブルに発展し、企業の信頼や従業員の士気に大きな影響を与える可能性があります。こうした課題に対応するためには、まずは専門家へ相談してみてはいかがでしょうか?

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本コラムでは、前回のコラム 「介護休業制度の対象拡大と企業の対応」に続く内容として、最新の改定ポイントを整理するとともに、この見直しが 企業の人事労務にどのような影響を与えるのか、また、実務対応としてどのような準備が必要なのか を詳しく解説します。

 

介護休業制度の概要

介護休業制度は、育児・介護休業法 に基づき、労働者が要介護状態にある家族を介護するために 通算93日間の休業を取得できる制度 です。
対象家族には、配偶者、父母、子、祖父母、兄弟姉妹、孫、配偶者の父母 が含まれ、同居・別居を問いません。企業としては、労働者から介護休業の申し出があった場合に、適切に 「常時介護を必要とする状態」に該当するか を判断し、休業の取得を認める義務があります。

今回の見直しの背景

高齢者介護に偏った基準の見直し

これまでの判断基準は、高齢者介護を想定して作られていた ため、障害児・医療的ケア児を介護するケースには対応しづらい という課題がありました。

この点について、新たな判断基準では 障害児・者や医療的ケア児・者も対象になり得る ことが明記されています。

介護保険制度の認定基準との整合性

これまで「常時介護を必要とする状態」は 介護保険制度の「要介護2以上」 を基準としていました。
しかし、要介護認定は40歳以上でないと受けられない ため、若年層(障害児・医療的ケア児など)が対象になりにくいという問題がありました。

新たな判断基準では、要介護認定がなくても、日常生活において一定の介助が必要であれば対象になり得る ことが明確にされました。

企業の実務負担の軽減

従来の基準では、事業主が 「どのような書類をもとに判断すべきか」が明確ではなかった ため、実務上の混乱がありました。
今回の見直しでは、「障害支援区分認定通知書」「障害児通所給付費支給決定通知書」などが証明書類として追加されるべき ことが、新たな判断基準に明記されました。

新たな判断基準

今回の見直しにより、介護休業の対象となる「常時介護を必要とする状態」の判断基準が変更されます。新たな基準では、介護保険の要介護認定がなくても、一定の条件を満たせば介護休業の取得が可能 となります。

具体的には、以下のいずれかに該当する場合、介護休業の対象とされます。

  1. 介護保険制度における要介護2以上であること
  2. 12項目のうち、「2」が2つ以上、または「3」が1つ以上該当し、かつ、その状態が継続すると認められること

さらに、今回の見直しでは、障害児や医療的ケア児の介護も判断基準対象にしており、判断基準がより実態に即した形へと整理されました。 これは、従来の基準が高齢者介護を前提としていたため、障害児や医療的ケア児を介護する家庭では使いにくいものとなっていたことが背景にあります。

判断基準の主な変更点

今回の基準見直しにあたり、「5領域20項目」の調査項目(障害児通所支援の要否を決定する基準) を参考にしながら、「仕事と介護の両立」という観点を考慮 し、以下のような変更が加えられました。

✅ 危険回避ができない状態を考慮(項目⑧)
発達障害や知的障害などにより、危険な状況を認識できず、自発的に回避することができないケース があることを踏まえ、見守りが必要な状態であることが判断基準に追加 されました。

✅ 認知・行動上の課題が日常生活に支障をきたす場合(項目⑩)
「見通し(予測理解)」や「急な変化への対応」が困難な障害児・者の状況が考慮されました。例えば、急な予定変更や環境の変化に適応できず、混乱やパニックを起こすケース がある場合、日常生活に大きな支障が生じるため、介護が必要と判断されます。

✅ 医療的ケアを必要とする状態の表現を一般化(項目⑪)
「薬の内服」という表現を「医薬品の使用・管理」へと変更し、注射薬、外用薬、人工呼吸器、経管栄養などの医療機器の管理も含める形に修正 されました。これにより、医療的ケアを必要とする障害児・者がより適切に判断基準に当てはまるようになりました。

このように、新たな判断基準では、従来の「要介護2以上」という単純な基準だけでなく、障害や医療的ケアを必要とするケースをより具体的に考慮する形 となりました。

企業としては、従業員から介護休業の申請があった際に、新たな基準に基づいて適切に判断し、柔軟に対応することが求められます。

企業が対応すべき実務ポイント

① 労働者への周知と意向確認:企業は、労働者に適切な情報提供を行い、制度を理解してもらうこと が求められます。

②証明書類の確認ルールを整備:「障害支援区分認定通知書」など、新たな証明書類を受け入れるための 社内フローや所属長、事務員への周知を徹底する必要があります。

まとめ|介護休業制度の新基準に対応するために今すべきこと

今回の「常時介護を必要とする状態」の判断基準の見直しにより、介護休業の対象範囲が拡大し、より多様なケースに対応しやすくなります。 これは、企業にとって単なる法改正ではなく、従業員の働きやすさを向上させる重要な機会 でもあります。

しかし、適切な対応を怠ると、
✅ 介護休業の申請を受けた際に、対応に戸惑い時間を浪費する
✅ 労務管理の不備によって従業員の不満やトラブルが生じる
✅ 法改正への対応が遅れ、企業の信頼に影響する
といったリスクが生じる可能性があります。

一方で、早期に対応を整備し、適切なサポートを行うことで、企業は「従業員が安心して働ける環境」を構築し、人材定着率の向上や企業イメージの向上にもつなげることができます。

当事務所では、

  • 介護休業制度に関する社内規定の見直し
  • 労務リスクを軽減するための適切な証明書類の管理方法
  • 従業員への適切な制度周知・意向確認のサポート

など、実務に即した対応策をご提案し、企業の労務管理をスムーズに進めるお手伝いをいたします。

「この対応、どうすればいいのか?」
「どこから手をつければいいのか?」

そんなお悩みの経営者・人事担当者様は早めの対応が肝要です。当事務所では専門家としての実績と知見を活かし、貴社の状況に最適なサポートをご提供いたします。
介護休業制度の見直しを機に、より強固な人事労務体制を整えたいとお考えなら、ぜひ 当事務所にご相談ください。

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【参考リンク】介護休業制度等における「常時介護を必要とする状態に関する判断基準」の見直しに関する研究会報告書を公表します
【参考資料】介護休業制度等における「常時介護を必要とする状態に関する判断基準」の見直しに関する研究会報告書

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