東京都のカスタマー・ハラスメント防止ガイドラインについて (3)|事業者の責務と具体的な取り組み・措置

本コラムは、東京都が策定した「カスタマー・ハラスメントの防止に関する指針(ガイドライン)」を解説するシリーズの最終回です。
第1回ではカスハラの定義と基本概念、第2回では代表的な行為類型や具体的な事例を紹介しました。そして今回、第3回では、事業者が果たすべき責務と、具体的な取り組みについて詳しく解説 します。

カスタマー・ハラスメント(以下、カスハラ)は、単なるクレーム対応の問題ではなく、事業者が従業員を守るために組織的に取り組むべき重要な経営課題 です。従業員が安心して業務に専念できる環境を整えることは、企業の持続的成長にとって欠かせません。

本記事では、東京都のガイドラインを踏まえ、事業者が講じるべき具体的な対策 を整理し、実践的なアプローチをご紹介します。

【参考リンク】東京都 カスタマー・ハラスメントの防止に関する指針(ガイドライン) 
【参考資料】東京都 カスタマー・ハラスメントの防止に関する指針(ガイドライン)[PDF]
【参考資料】東京都 カスタマー・ハラスメントの防止に関する指針(ガイドライン)[スライド版]

事業者が取るべき具体的対策

東京都のガイドラインでは、事業者が取るべき対策として、以下のポイントが示されています。

カスハラ防止方針の策定

事業者は、カスハラ対策を組織として明確に打ち出し、従業員に周知することが重要です。これには、以下のような施策が含まれます。

  • カスハラ対策方針の策定と社内周知

  • 社内の対応基準やマニュアルの整備

  • 従業員の意見を反映した継続的な改善

相談窓口の設置と従業員支援

従業員が安心して働ける環境を整備するため、企業は相談窓口を設置し、従業員がカスハラ被害を報告できる仕組みを作る ことが求められます。

  • カスハラ専用の相談窓口を設置

  • 迅速な対応が可能な責任者の配置

  • メンタルヘルスサポートやカウンセリングの提供

クレーム対応のガイドライン策定

カスハラと適切なクレーム対応を明確に区別し、適切な対応フローを構築することが重要です。

  • 正当なクレームとカスハラの区別を従業員に教育

  • 対応フローを標準化し、現場での判断基準を統一

  • クレーム対応チームを設置し、エスカレーションルールを明確化

社内体制の整備(ポリシー策定、相談窓口の設置、研修)

カスハラ対策を強化するには、企業全体での意識改革 が不可欠です。そのために、以下のような施策が推奨されます。

ポリシー策定と社内研修

カスハラ対策の基本方針を明文化し、定期的な研修を行うことが求められます。

  • 社内の行動規範として「カスハラ対策ポリシー」を策定

  • 新入社員研修や管理職向け研修にカスハラ対応を組み込む

  • 模擬クレーム対応研修を実施し、従業員の対応力を強化

事例を活用した実践的なトレーニング

従業員が現場で適切に対応できるよう、実際のカスハラ事例を活用したトレーニングが有効です。

  • ケーススタディを用いたロールプレイング研修の実施

  • 成功事例や失敗事例を共有し、改善点を明確化

  • 外部専門家を招いた講習会の実施

経営層のリーダーシップ醸成

経営層が積極的にカスハラ対策に関与することで、組織全体の意識改革を促進できます。

  • 経営者自らがカスハラ対策の重要性を発信

  • カスハラ防止施策を経営戦略の一環として位置づける

  • 社内外の関係者と協力し、業界全体での意識向上を推進

法的対応と行政との連携

必要に応じた法的措置の検討

悪質なカスハラ行為に対しては、企業が法的措置を取ることも検討すべきです。

  • 警察や弁護士と連携し、法的対応を準備

  • 警察への相談・被害届の提出

  • 従業員の安全確保のための措置(出勤調整、防犯対策など)

行政機関との協力

東京都をはじめとする自治体のカスハラ対策に関する支援を活用し、行政と連携することが求められます。

  • 行政の無料相談窓口の活用

  • 労働局や消費者庁と情報共有し、適切な対応策を検討

  • 業界団体を通じた対応強化と連携策の構築

まとめ

カスハラ問題は、もはや一企業の努力だけで解決できる問題ではありません。事業者は、組織全体での対策を講じるとともに、業界全体・行政との連携を図ることが求められます。

本ガイドラインを活用し、 カスハラ防止方針の策定 ✅ 社内体制の整備(相談窓口設置・研修実施) ✅ 適切なクレーム対応マニュアルの策定 ✅ 法的措置の準備と行政との連携強化

を進めることで、従業員が安心して働ける環境を構築し、企業の信頼性を高めることができます。

当事務所では、「ハラスメント防止コンサルタント」の資格を持つ専門家 が、貴社のカスハラ対策をサポートいたします。

✅ 企業ごとの課題に合わせたカスハラ対応戦略の策定 ✅ 社内研修やコンサルティングの実施 ✅ 法的リスクへの対応アドバイス

カスハラ対策は、従業員の働きやすさを守るだけでなく、企業の持続的成長に直結する重要な課題です。今こそ、本気でカスハラ対策に取り組む時です。

貴社のカスハラ対策の導入・見直しをお考えの方は、ぜひ当事務所にご相談ください。

【参考リンク】東京都 カスタマー・ハラスメントの防止に関する指針(ガイドライン) 
【参考資料】東京都 カスタマー・ハラスメントの防止に関する指針(ガイドライン)[PDF]
【参考資料】東京都 カスタマー・ハラスメントの防止に関する指針(ガイドライン)[スライド版]

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