育児休業等給付の最新動向と出生後休業支援給付金について
2025年4月1日より、育児休業給付制度に「出生後休業支援給付金」および「育児時短就業給付金」が新設されます。これにより、育児と就労の両立がより一層支援されることになります。特に、出生後休業支援給付金は、両親がともに育児に関与することを促進するための新たな制度として注目されています。これに伴って、1月17日、厚生労働省は、令和7年4月1日からの育児休業等給付に関するパンフレット等を公表しました。
しかし、企業にとっての対応が遅れると、労務管理の不備や従業員の不満が蓄積し、職場環境に悪影響を及ぼす可能性があります。 本記事では、育児休業等給付制度の概要、新たな給付金の詳細、そして企業が今すぐ取るべき対応について解説します。
【参考サイト】育児休業等給付について
【参考資料】育児休業給付の内容と支給申請手続(令和7年1月1日改訂版)
育児休業等給付制度の概要
育児休業給付制度は、雇用保険に加入する労働者が育児のために休業する際、一定の条件を満たせば給付金を受け取れる制度です。従来の給付金として、以下の2種類がありました。
- 出生時育児休業給付金(産後パパ育休)
→ 子の出生後8週間以内に最大4週間(28日)の休業を取得した場合に支給 - 育児休業給付金
→ 原則として子が1歳になるまで取得可能(最大2歳まで延長可)
今回の改正では、これらに加えて以下の新たな給付金が導入されます。
(1) 出生後休業支援給付金
この給付金は、育児休業給付金または出生時育児休業給付金を受ける労働者が、両親ともに一定期間の育児休業を取得した場合に追加で支給されます。
受給要件
出生後休業支援給付金を受けるには、次の2つの条件を満たす必要があります。
- 被保険者本人(主に父親)が、育児休業を通算14日以上取得すること
- 被保険者の配偶者(主に母親)が、「子の出生日または出産予定日のうち早い日」から「子の出生日または出産予定日のうち遅い日から起算して8週間を経過する日の翌日」ま
での期間に通算して14日以上の育児休業を取得したこと 、または、子の出生日の翌日において「配偶者の育児休業を要件としない場合 」に該当していること 。
「配偶者の育児休業を要件としない場合」とは
1.配偶者がいない
2.配偶者が被保険者の子と法律上の親子関係がない
3.被保険者が配偶者から暴力を受け別居中
4.配偶者が無業者
5.配偶者が自営業者やフリーランスなど雇用される労働者でない
6.配偶者が産後休業中
7.1~6以外の理由で配偶者が育児休業をすることができない
給付額
支給額は、休業開始時賃金日額 × 休業日数(最大28日) × 13% です。
この給付金は、育児休業給付金(67%)と併用すると、手取りで休業前の賃金の約80%(手取り100%相当)が確保できます。
例えば、休業開始時賃金日額が1万円で14日間の休業を取得した場合:
- 育児休業給付金:10,000円 × 14日 × 67% = 93,800円
- 出生後休業支援給付金:10,000円 × 14日 × 13% = 18,200円
- 合計:112,000円(80%の保障)
申請期間
◼ 申請開始日(いつから申請できるか)
子の出生日(出産予定日前に子が出生した場合は出産予定日)から起算して8週間を経過する日の翌日から申請可能となります。
ただし、
①出生時育児休業の取得日数が28日に達した場合は達した日の翌日から、
②2回目の出生時育児休業をした場合は2回目の出生時育児休業を終了した日の翌日から、申請可能となります。
※本ただし書きは、2025(令和7)年4月1日以後に提出される申請から適用。
◼申請期限(いつまでに申請する必要があるか)
申請開始日から起算して2か月を経過する日の属する月の末日までに「育児休業給付受給資格確認票・出生時育児休業給付金/出生後休業支援給付金支給申請書」を提出する必要が
あります。
出生時育児休業は、同一の子について2回に分割して取得できますが、申請は1回にまとめて行います。
(2) 育児時短就業給付金
育児時短就業給付金は、2歳未満の子を育てる労働者が、短時間勤務制度を利用して働いた場合に支給される給付金です。しかし、なお2025年1月29日時点では、リーフレット等の詳細資料は準備中となっています。
企業が対応を怠ると起こるリスク
今回の制度改正に伴い、企業が給付金の適用や申請手続きに適切に対応しなければ、以下のようなリスクが発生する可能性があります。
給付金申請ミスによる従業員の不利益
申請手続きを誤ることで、従業員が本来受け取れるはずの給付金を受け取れなくなる最悪のケースも考えられかねません。例えば、必要書類の提出遅れや記載ミスが原因で、給付金支給が遅れる可能性もあります。企業として適切な対応ができなければ、従業員の信頼を損なうことになりかねません。
事務手続きの煩雑化による労務負担の増加
改正に伴い、企業の人事・労務担当者は新たな給付金制度に対応するため、申請フローの整理が求められます。事前準備が不十分だと、申請業務が滞り、余計な負担が発生する恐れがあります。
当事務所の考察
育児休業制度の拡充は、企業の未来に直結する重要な施策です。出生後休業支援給付金等の導入により、従業員の育休取得率向上や職場環境の改善が進めば、優秀な人材の定着や採用競争力の強化につながります。
しかし、制度の適用範囲や実務対応には課題も多く、適切な運用をしなければ「育休取得がしにくい」「申請手続きが煩雑」といった問題に直面する可能性があります。また、育児時短就業給付金の影響についても慎重な対応が求められます。キャリアの停滞(マミートラック)を防ぎつつ、柔軟な働き方を推進するための戦略が必要です。
✅ 2025年4月1日から、育児休業給付制度が大幅に変更される
✅ 従業員の育休取得率向上が、企業の人材確保・職場環境改善につながる
✅ 対応を怠ると、労務管理トラブルや離職リスクが発生する
企業がこの制度を適切に運用できるよう、当事務所では法改正への迅速な対応、就業規則(育児休業規程)の見直し、助成金活用のアドバイスまで育児休業制度の導入から運用までをトータルサポートし、企業の成長につながる最適な労務戦略を提案します。
「育休制度を活用して、企業の魅力を高めたい」「法改正対応で何をすればいいのか分からない」とお考えの経営者・人事担当者の方は、ぜひ一度ご相談ください。