年末年始、ドラッカーを読み返して考えた「風土改革」と「エンゲージメント」

5年ぶりの故郷,糸島でのひとコマ

年が明けてしばらく経ちましたが、年末年始にドラッカーの本を読み返した話を今さらながら書いてみようと思います。 『マネジメント』『現代の経営』『経営者の条件』――どれも長く読み継がれている名著ですが、改めて目を通してみると、今の時代にこそ必要な示唆が詰まっていると感じました。

特に印象に残ったのは、組織の「風土改革」と「エンゲージメント向上」に関する考察です。

「組織は人である。組織の成果は、そこに属する人々の知識、スキル、意欲によって決まる。適切な人材配置と動機付けがなければ、どんなに優れた戦略を持っていても機能しない」(『現代の経営』を参考にした考察)

これはドラッカーが一貫して説いてきたことですが、医療・福祉事業に携わる方々にとっては、特に重みのある言葉ではないでしょうか。医療や介護の現場では、設備や制度よりも、そこで働く「人」のモチベーションこそが、サービスの質を左右します。

では、ドラッカーは「働く人々の意欲を高め、組織をより良いものにするにはどうすればよいか?」について、どのような考えを示しているのでしょうか。いくつかのキーワードをご紹介します。

目標管理(MBO):組織のビジョンと個人の目標を結びつける

『現代の経営』では、「目標管理(MBO)は、組織の目標と個人の目標を結びつけるための仕組みである」と説明されています。

例えば、ある病院の看護師が「この一年で、患者とのコミュニケーションをより円滑にし、安心して治療を受けられる環境を作る」という目標を立てるとします。これは単なる業務の延長ではなく、「患者中心の医療」という病院のビジョンと直結しているのです。

  • 経営者・管理者が組織の目標を明確にする
  • 職員自身に目標を設定させ、それを組織の目標と結びつける
  • 定期的な振り返りを行い、成果を実感させる

「ナレッジワーカー」としての職員の尊重

ドラッカーは知識労働者(ナレッジワーカー)の重要性を強調していました。現代の組織では、従業員が単なる指示待ちではなく、自ら考え、行動し、貢献することが求められます。

ナレッジワーカーが主体的に知識を活用し、組織に貢献できる環境を作るためには、経営者や管理者が現場の声を直接聞くことが重要です。特に、現場の意見を組織の意思決定に活かすための仕組みが求められます。

その一例として、多くの企業や団体が採用しているのが「タウンホールミーティング」です。これは、組織のリーダーと職員が対話を行う場を設けることで、経営方針を共有し、意見交換を促す方法です。

※タウンホールミーティングとは、経営者や管理者が職員と直接対話をする場を設ける手法です。組織のビジョンを共有したり、現場の意見を吸い上げることを目的とし、階層を超えたコミュニケーションを促します。

  • 職員が提案できる場を設ける
  • 現場の知識を組織全体で共有し、学び合う文化を作る
  • 単なる業務指示ではなく、職員の判断を尊重する

組織文化の「ストーリー」を共有する

ドラッカーは『マネジメント』の中で、「組織とは目的を持つ社会的存在である」と語っています。

医療や福祉の現場では、「何のために働くのか?」が明確でないと、日々の仕事が単なるルーティンになってしまいます。

  • 経営者自身が、施設の「理念」を語る機会を作る
  • 職員同士が「働く意味」について語る場を設ける
  • 施設の文化を伝えるストーリーを共有する

「評価の仕組み」を整え、職員の努力を見える化する

成果を測定しなければ、適切なマネジメントはできません。これはドラッカーの著作の中でも繰り返し述べられているポイントのひとつです。

例えば、「職員が患者や利用者にどれだけ寄り添ったか」という定性的な評価は、数値化しにくいため、見過ごされがちです。しかし、これを適切に評価する仕組みを作れば、職員のモチベーション向上につながります。

  • 数値(定量評価)と行動(定性評価)の両面から評価する
  • 定期的にフィードバックの機会を設け、成長をサポートする
  • 努力が認められる文化を醸成する

まとめ:「人を大切にする組織」が成功する

ドラッカーの本を読み返して改めて感じたのは、「組織の成功は、そこで働く人々のエンゲージメントにかかっている」ということです。

医療や福祉の現場では、単なる「業務効率化」ではなく、「いかに職員がやりがいを感じながら働けるか」が、施設全体の質を決めます。

「この施設で働き続けたい」 そう思える環境を作ることが、風土改革の第一歩なのではないでしょうか。

年末年始、ドラッカーを読み返したことで、この問いに改めて向き合うことができました。

少しでもヒントになれば幸いです。

menu