持続可能な社会保障改革に向けた挑戦:令和6年第15回経済財政諮問会議から(2)
令和6年第15回経済財政諮問会議では、社会保障制度の持続可能性を確保するため、具体的な改革案が示されました。本コラムでは、改革の具体策を詳細に解説し、それが医療・介護事業者や中小企業にどのような影響を与えるのかを考察します。
働き方に中立的な制度の確立
「働き方に中立的な制度の確立」は、労働者の雇用形態や勤務先にかかわらず、公平な保険適用を目指すものです。以下の取り組みが提案されています。
1.被用者保険の適用拡大
企業規模要件や非適用業種を撤廃することで、非正規雇用者や個人事業所で働く人々にも保険適用を広げます。これにより、全労働者が安心して働ける環境が整備される一方、企業には新たな保険料負担が生じる可能性があります。
2.年収の壁問題への対応
年収の壁を緩和し、労働者が収入を制限せずに働ける環境を整えます。この改革は、特にパートタイム労働者を多く雇用する事業者にとって大きな意味を持ちます。
3.在職老齢年金の見直し
支給停止基準額を引き上げ、高齢者の就労意欲を向上させることが狙いです。これにより、企業は経験豊富な高齢労働者を活用する機会を得られます。
給付と負担のバランスの確保
社会保障費の負担を現役世代に偏らせないため、以下の改革が提案されています。
1.応能負担の強化
所得や資産に応じた負担を強化することで、公平な負担を実現します。これは、社会全体の支え合いを促進する重要な施策です。
2.セルフメディケーション推進
医療費抑制のため、軽症者が自宅で治療できる仕組みを推進します。医療機関にとっては、予防医療の提供が新たな事業機会となる可能性があります。
3.介護給付と負担の見直し
利用者負担の見直しにより、介護サービス提供者は利用者層の変化に対応した新たなサービスモデルを検討する必要があります。
効率的な医療・介護提供体制の構築
医療と介護を一体的に捉えた提供体制の整備が進められています。
1.地域医療構想の推進
医療機関の機能分担と連携を強化し、地域に最適化された医療体制を構築します。これにより、地域住民の医療アクセスが向上します。
2.医師偏在の是正
診療報酬の見直しや規制的手法を活用し、医師不足地域への適正な医師配置を実現します。これには、地方医療機関の運営効率化が求められます。
3.介護サービスの生産性向上
ロボットやAI技術の活用により、介護サービスの質を維持しつつ効率化を図ります。しかし、技術導入には初期投資が必要であり、中小規模の事業者には資金支援が求められるでしょう。
医療・介護分野におけるイノベーション創出
技術革新は、医療・介護現場に変革をもたらします。
1.医療DXの推進
全国医療情報プラットフォームの整備により、患者データの共有が容易になります。これにより、医療機関間の連携が強化されます。
2.創薬力強化
迅速な治験環境を整備することで、新薬開発が促進されます。これにより、医療の選択肢が増え、患者満足度が向上します。
当事務所の見解: 改革をチャンスと捉える
今回の提案は、医療・介護事業者や中小企業に多くの変化をもたらしますが、その中には新たな機会も存在します。特に、予防医療の推進や技術革新は、事業者が新たなサービスモデルを構築するきっかけとなるでしょう。当事務所が注目するのは、以下の点です。
被用者保険適用拡大の実務対応
非正規雇用や小規模事業所が多い分野では、保険料負担増による影響が避けられません。しかし、これは従業員定着率の向上や雇用の安定化という長期的な利点につながる可能性があります。これを実現するには、賃金設計や雇用契約の見直しが必要です。
高齢者雇用の新しい局面
在職老齢年金の基準額引き上げにより、高齢者の再雇用が促進されます。企業としては、彼らのスキルや経験を最大限に活用できる職場環境を整備することで、戦力としての価値を引き出す必要があります。職務内容や労働条件の柔軟な設計が鍵となるでしょう。
DX導入と人材教育
医療・介護DXは業務効率化の大きな可能性を秘めていますが、技術導入に伴うコストだけでなく、従業員教育も重要です。新しい技術を活用するためのスキルアップ研修や、従業員の不安を払拭するためのサポート体制が求められます。
介護提供体制の変革
ロボットやAIを活用した介護サービスは、労働力不足の解消に寄与します。ただし、導入後の運用ルールや従業員の負担軽減をどのように実現するかが課題です。当事務所では、法的視点からのサポートを提供し、効率化が適正に進むよう支援します。
当事務所は、これらの変化を中小企業や医療・介護事業者が積極的に活用できるよう、具体的で実践的な助言を行っています。社会保障制度は、すべての事業者にとって避けられない重要なテーマです。これを単なるコスト増ではなく、将来の成長に向けた投資と捉える視点を共有し、持続可能な運営を支えるパートナーとしてご支援します。
改革の波を前向きに捉え、共に未来を切り開いていきましょう。
【参考リンク】第15回会議資料:会議結果 令和6年
【参考資料】資料8 持続可能性の確保に向けた社会保障改革(有識者議員提出資料)