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【24.9.27 福祉新聞】改訂版「合併・事業譲渡等マニュアル」の概要と重要ポイント

2024年9月27日、福祉新聞によると、厚生労働省は9月19日、介護経営の大規模化や協働化に向けた政策パッケージの周知を求める事務連絡を発表したと報じました。これは、介護業界が直面している人材確保の難しさや、安定した事業継続を支援するために、経営改善を目的としたものです。詳細は厚労省の特設サイトに掲載されています。

今回の事務連絡の背景には、介護分野における経営の効率化と安定化が急務であるという現状があります。特に、単一の法人で事業を展開するだけでは、限られた資源や人材不足に直面することが多くなっています。そのため、複数の法人が協働し、大規模な事業展開を図ることで、リスクの分散と効率化を実現しようという動きが加速しています。

この政策パッケージでは、法人間連携や合併、事業譲渡などが推奨されており、これに対応するためのマニュアルが改訂されました。このマニュアルは、社会福祉法人がどのように合併や事業譲渡を進めるべきか、具体的な手順や注意点を網羅しています。経営者にとって、法人合併や事業譲渡のメリットを最大限に活かすための重要な指針となります。

第1章 合併・事業譲渡の検討にあたっての重要ポイント

社会福祉法人が合併や事業譲渡を検討する際に、まず重要となるのは、経営戦略としての明確な目的設定です。単なる経営規模の拡大ではなく、地域福祉の発展や法人としての持続可能な運営を実現するためのものであることが求められます。

具体的には、次のようなポイントが挙げられます。

  • 経営の目的と合致しているか:法人の理念や目指すべき方向性と、合併・事業譲渡が調和しているかどうか。
  • 地域への影響を考慮しているか:地域住民の福祉ニーズに応えられる形での合併・事業譲渡が行われているかが重要です。

このように、法人の目指すべき方向性を確認しながら合併・事業譲渡を進めることで、より良い経営基盤の構築を図ることが可能です。

第2章 合併・事業譲渡における課題と解決策

2.1 合併・事業譲渡の主な課題 合併や事業譲渡には多くのメリットがある一方で、いくつかの重要な課題も存在します。特に、合併後のガバナンス体制の統一や、異なる法人文化の融合、人材の処遇問題などが挙げられます。これらの課題を乗り越えるためには、事前に入念な準備と関係者間の協議が欠かせません。

2.2 課題解決に向けた取り組み このような課題を解決するために、以下の具体的な取り組みが提案されています。

  • 合併前の調査・分析:各法人の財務状況や運営方針、人事構成を詳細に調査し、合併後のスムーズな移行を支援します。
  • 専門家の協力:合併や事業譲渡は法的手続きや労務管理が絡むため、社労士や弁護士の助言を得ることでリスクを最小限に抑えることができます。

これらの解決策を講じることで、合併後の混乱を防ぎ、法人全体の効率化と安定化を実現することが可能です。

第3章 社会福祉法人における合併手続きの流れ

3.1 合併における留意事項 合併の成功は、法人間での信頼関係の構築と、十分な準備期間にかかっています。合併後に統合される組織や事業の方向性を明確にし、それぞれの役割や権限を整理することが必要です。

3.2 合併手続きの全体像 合併は、いくつかの重要な手続きを経て行われます。以下がその主な流れです。

  1. 合意形成:まず、合併する法人同士が基本的な合意を形成し、合併の目的や進め方を確認します。
  2. 役員や評議員の選定:合併後の法人運営を適切に行うため、役員や評議員の選定を行います。
  3. 合併契約書の作成:両法人が合意に基づいて契約書を作成し、法的手続きを開始します。
  4. 評議員会の承認:合併契約書が作成された後、評議員会にて合併の承認を得ます。
  5. 所轄庁の認可:最終的には所轄庁の認可を受けることで、合併が正式に成立します。

これらの手続きを順序立てて行うことで、法人は法的にも事業運営面でもスムーズに合併を進めることが可能です。

3.3 合併後の重要手続き 合併が成立した後も、いくつかの重要な手続きが残されています。特に職員の処遇や利用者への説明、地域社会への告知などは、合併後の信頼関係の構築に直結するため、慎重に進める必要があります。

  • 職員の処遇:職員の雇用条件や新たな組織体制に関する説明を丁寧に行い、彼らが安心して働ける環境を整えることが求められます。
  • 地域社会への説明:利用者や地域住民に対しても、合併の目的や今後の方針を説明し、理解を得ることで円滑な運営が実現します。

第4章 事業譲渡の手引き

4.1 事業譲渡の重要性と留意事項 事業譲渡は、事業の継続性を保ちながら経営を効率化するための重要な手段です。しかし、その過程では財務・税務の処理や、雇用に関する法的手続きなど、多くの複雑な要素が関わってきます。

4.2 事業譲渡の手続き全体像 事業譲渡のプロセスは、以下の流れで進行します。

  1. 事業譲渡契約の締結:まず、譲渡元と譲受先の法人が契約を交わし、詳細な条件を定めます。
  2. 資産・負債の移管:譲渡される事業に関連する資産や負債を、適切な形で移管します。
  3. 人事・労務に関する対応:譲渡される事業に従事する職員の雇用条件や処遇を整理し、新たな体制に移行します。

これらの手続きを適切に進めることで、事業譲渡後もスムーズな運営が可能になります。

当事務所としての見解

今回の「合併・事業譲渡等マニュアル改訂版」は、介護・福祉事業所が経営の効率化と持続可能な運営を目指す上で、非常に実践的な指針を提供しています。

合併後のガバナンスと透明性の確保

合併や事業譲渡が成功した後に待っているのは、新体制での運営をいかにスムーズに進めるかという課題です。特に、合併後のガバナンスの強化と透明性の確保は、法人の持続可能な運営に直結します。適切な役員の選定や法人内部の規定整備、外部監査の実施など、合併後の体制を強化するための取り組みが重要です。

評議員会や理事会の役割

評議員会や理事会は、合併後の法人運営の監督機関として重要な役割を果たします。合併前からの法人の運営方針や文化が異なる場合、役員や評議員は調整に時間がかかることも少なくありません。そのため、事前に統一された運営方針やガイドラインを設け、合併後の役員や評議員が同じ目標に向かって進む体制を整えることが求められます。

透明性の確保と外部監査

合併後に法人の透明性を確保するため、外部監査の導入が推奨されています。特に、合併によるスケールメリットが得られる一方で、経営が複雑化するため、第三者による定期的な監査は法人のガバナンス強化に貢献します。また、利用者や地域住民に対しても、経営の透明性を示すことで信頼を築くことができます。

職員の処遇と労務管理の重要性

合併や事業譲渡において最も重要な課題の一つが、職員の処遇に関する問題です。特に、合併後の労務管理体制をどう整えるかが、法人の持続可能な成長に直結します。

合併後の職員処遇の一貫性

合併に伴い、異なる労働条件の統一が求められる場合があります。例えば、異なる賃金体系や福利厚生の調整、職務内容の再定義などです。これらを適切に整備し、一貫した処遇を提供することで、職員のモチベーションを維持し、円滑な業務運営を確保できます。

労務リスクの回避と管理

労務リスクに関しては、労働法の専門知識が不可欠です。合併により職員が新たな雇用契約や就業規則に従う必要が生じる場合、その過程で不適切な対応を行うと、労働紛争が発生するリスクがあります。特に、解雇や賃金の引き下げなどが絡む場合、法的な問題が大きくなる可能性があるため、社労士や弁護士のサポートを受けながら、慎重に対応する必要があります。

利用者や地域社会への説明

合併や事業譲渡が無事に完了しても、利用者やその家族、地域社会との信頼関係を維持するためには、十分な説明とコミュニケーションが必要です。

利用者への丁寧な説明

合併や事業譲渡によってサービスの内容が変更されたり、施設の運営体制が変わることがあります。このような場合、利用者に対して丁寧に説明し、合併後もサービスが継続されることや、サービスの質が維持されることを伝えることが重要です。利用者やその家族が安心してサービスを受け続けられるよう、透明性の高い情報提供が求められます。

地域社会との関係維持

社会福祉法人は、地域社会との連携が不可欠です。合併後も地域住民との良好な関係を維持し、地域福祉の発展に貢献するための取り組みを続ける必要があります。特に、地域の住民説明会や意見交換会を実施することで、合併後も地域に根差した福祉サービスを提供する姿勢を示すことが大切です。

事業譲渡における特有の課題とその対処法

事業譲渡は、合併とは異なる特有の課題を伴います。特に、事業譲渡によって資産や負債、職員の移管が行われるため、その過程での法的手続きや財務・税務の処理が非常に重要です。

資産・負債の移管と適切な財務処理

事業譲渡では、譲渡される事業に関連する資産や負債の適切な移管が求められます。この移管が適切に行われない場合、事業譲渡後に財務トラブルが発生するリスクがあります。特に、土地や建物、機械設備などの固定資産に関する処理や、負債の引き継ぎが重要なポイントです。適切な財務処理を行うためには、会計士や税理士の協力を得ることが不可欠です。

人事・労務関連の調整

事業譲渡に伴い、譲渡元の職員が譲受先法人に移籍するケースでは、新しい雇用条件や就業規則が適用されます。この際、労務リスクを回避するために、職員との個別面談や就業規則の改定説明会などを実施し、全ての職員が新しい体制に理解と納得を持って移行できるようにすることが大切です。

最後に

今回の「合併・事業譲渡等マニュアル」は、介護・福祉分野の経営者にとって、経営の効率化と持続可能な運営を実現するための重要な指針となっています。法人の合併や事業譲渡は、ただの規模拡大ではなく、より良いサービスを提供するための手段であり、地域福祉の発展に大きく貢献する可能性を秘めています。

合併後や事業譲渡後の職員処遇の統一や、地域住民への説明、そして透明性を確保したガバナンス体制の構築が、法人の信頼性を高め、経営基盤を強化するために不可欠です。法的手続きを適切に進め、関係者全体に対する説明と対応を丁寧に行うことで、スムーズな事業運営が実現されます。

社会福祉法人が合併や事業譲渡を通じて、新たな段階に進む際には、このマニュアルが大きな助けとなるでしょう。今後、介護や福祉の現場がさらなる発展を遂げるためには、法人が経営の安定化と効率化に向けて積極的に取り組む姿勢が求められています。

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