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介護施設・中小企業向け: 短時間労働者に対する適用拡大に係る事務の取扱いに関するQ&A集解説 | 令和6年10月施行 (4)

令和6年9月5日、健康保険組合宛に厚生労働省保険局保険課から事務連絡として最新版の「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の更なる適用拡大に係る事務の取扱いに関するQ&A集」(その3)が発表されました。

この事務連絡を踏まえて、ここまで、短時間労働者への健康保険・厚生年金保険の適用拡大に関する重要なポイントを解説してきました。
今回は最終回として、複数の事業所で働く労働者の取り扱いや、短時間正社員に対する対応について触れていきます。これらのケースは、特に多様な働き方が増える現代において、事業主にとって見過ごせない問題です。さらに、今回のコラムの最後には、社労士事務所としての見解を述べ、経営者や人事担当者が今後どのように対応すべきかを考察します。

 

Q49. 短時間正社員について、今回の適用拡大によって取扱いに変更はあるか。
A49.
短時間正社員については、今回の適用拡大によって取扱いに大きな変更はありません。

短時間正社員は、従来の基準に従って、社会保険の適用が行われます。これまでと同様、短時間労働者であっても、勤務時間や賃金の基準を満たせば、健康保険や厚生年金保険の適用対象となります。

例えば、介護施設で働く短時間正社員が週30時間働いており、賃金が月額8.8万円以上であれば、従来と変わらず社会保険の適用が続くことになります。


Q50. 同時に2ヶ所以上の事業所で勤務をしているが、複数の事業所で被保険者資格の取得要件を満たした場合、どのような手続きが必要になるか。
A50.
同時に複数の事業所で勤務し、それぞれの事業所で被保険者資格の取得要件を満たした場合、すべての事業所において被保険者資格を取得する必要があります。複数の事業所での勤務時間や賃金を合算して標準報酬月額が決定されます。

たとえば、介護施設Aでパートタイム、介護施設Bでも同様にパートタイムで働く従業員がいる場合、両方の事業所で被保険者資格を取得します。各事業所から被保険者資格取得届を提出し、それぞれの勤務時間や賃金を合算して社会保険料が決定されます。複数の事業所で働く労働者が増えている現在、このような手続きがしっかりと行われることが、従業員の福利厚生を守るために非常に重要です。

事務所としての見解

これまでのコラムで、短時間労働者への健康保険・厚生年金保険の適用拡大に関する重要なポイントを解説してきました。この制度改正は、社会保険制度の一貫性と公平性を追求するものであり、短時間労働者も長時間労働者と同じように社会保険の適用を受けられるようになることは、非常に意義深い変革です。しかし、これは単なる法律や規制の変更にとどまらず、企業や介護施設の経営者にとっては、今後の経営判断や人事戦略に直結する問題でもあります。

短時間労働者の増加を見越した人事戦略

特に介護施設や中小企業では、短時間労働者の存在が事業運営の重要な要素となっています。今回の適用拡大により、これまで社会保険の対象外であった労働者が保険に加入することになり、事業主側の負担も増える可能性があります。これは一見、コストの増加として捉えられがちですが、逆に言えば、従業員にとっては社会保険に加入することができることで安心感が増し、結果的に職場定着率の向上や、優秀な人材の確保につながる可能性があります。

このように、短期的な視点で見るとコスト増と感じるかもしれませんが、長期的に見れば、従業員満足度の向上や人材の安定確保につながるため、経営者としては、この制度改正をポジティブに捉えるべきです。従業員の福利厚生を充実させることは、企業の信頼度を高め、優秀な人材を引きつける要素となるのです。

制度改正をチャンスに変える

一方で、このような制度改正がもたらす変化を「負担」として捉えるのではなく、経営をより効率的に進める「チャンス」として活かす視点も必要です。たとえば、今回の適用拡大をきっかけに、労働時間の管理を見直し、短時間労働者でも長期的に安定したキャリアを築けるような制度設計を進めることができます。

従業員一人ひとりの働き方に寄り添い、柔軟な就業制度や労務管理を構築することで、事業全体の効率性も向上します。これにより、業務が効率化されるだけでなく、従業員の意欲や働きがいが向上するため、事業成長の原動力となるでしょう。特に、介護施設や中小企業では、限られたリソースの中で、いかに効率的に経営を進めるかが成功のカギとなります。

新たな労務管理の形を模索する

また、複数事業所での労働や短時間正社員の管理がさらに複雑化する中で、事業主は労務管理の効率化に向けた新しい取り組みが求められます。デジタルツールの活用や、外部の専門家との連携によって、複雑な労務管理もシンプルに処理することが可能です。ここで、私たちのような社会保険労務士事務所のサポートが必要になる場面が増えてくるでしょう。

これまでの慣習や固定観念にとらわれず、新しい労務管理の形を模索することで、経営に新たな視点を取り入れ、さらなる成長への道を切り開くことができます。今回の改正は、単に制度に対応するためのものではなく、経営者にとっても未来を見据えた戦略を構築するための一歩であり、ここに大きなチャンスがあるのです。

まとめ

今回のシリーズを通して、短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大が、介護施設や中小企業にとってどのような影響を与えるのかを見てきました。従業員にとっての福利厚生の充実はもちろん、経営者にとっても、労働力を安定的に確保するための重要な要素であることが理解できたかと思います。

今後、制度改正に伴う新しい労務管理の形を模索し、事業運営をさらに効率化させるために、当社労士事務所が全力でサポートいたします。制度対応を負担ではなく、次の成長へのステップと捉えて、一緒に未来を切り開いていきましょう。

【参考資料】短時間労働者に対する適用拡大に係る事務の取扱いに関するQ&A集の送付について(その3)(令和6年9月5日事務連絡)

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