適正な労務リスクマネジメントについて一緒に考えてみませんか、「人事労務」の専門家が身近にいる安心を感じてください。

介護施設・中小企業向け| 短時間労働者に対する適用拡大に係る事務の取扱いに関するQ&A集解説-令和6年10月施行 (2)

令和6年9月5日、健康保険組合宛に厚生労働省保険局保険課から事務連絡として最新版の「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の更なる適用拡大に係る事務の取扱いに関するQ&A集」(その3)が発表されました。

前回のコラムでは、短時間労働者への健康保険・厚生年金保険の適用拡大について、その背景や基本事項を解説しました。今回は、事業所が「特定適用事業所」に該当するかどうか、そして該当した場合の手続きについて詳しく見ていきます。加えて、所定労働時間の計算方法も解説します。特に介護施設や中小企業の経営者にとっては、この手続きを理解しておくことが、従業員の福利厚生を守りつつ、労務リスクを回避する上で欠かせません。


Q11. 施行日から特定適用事業所に該当する適用事業所は、どのような手続きが必要になってくるか。
A11.
施行日から特定適用事業所に該当する場合、事務センターに特定適用事業所該当届を提出する必要があります。さらに、該当する短時間労働者が新たに社会保険の適用を受ける場合は、被保険者資格取得届も併せて提出する必要があります。

 

 


Q12. 施行日から特定適用事業所に該当する可能性のある適用事業所に対して、あらかじめ機構から何らかのお知らせは送付されてくるか。
A12.
特定適用事業所に該当する可能性がある適用事業所に対しては、機構から「特定適用事業所該当事前のお知らせ」が送付されます。

従業員数が50人以上で、短時間労働者も多数いる介護施設では、このお知らせを受け取ることで、必要な手続きの準備を整え、事前に対応策を講じることが可能になります。

 


Q13. 「特定適用事業所該当事前のお知らせ」や「特定適用事業所該当通知書」が送付され、5か月目の翌月も被保険者の総数が50人を超えたため特定適用事業所に該当したにもかかわらず、事務センター等へ特定適用事業所該当届を届け出なかった場合はどうなるか。
A13.
「特定適用事業所該当事前のお知らせ」が送付され、5か月目の翌月も被保険者の総数が50人を超えたため特定適用事業所に該当したにもかかわらず、事務センター等へ特定適用事業所該当届を届け出なかった場合、機構が該当事業所として取り扱います。

事業所が届出を怠ったとしても、機構は自動的に特定適用事業所としての処理を進めます。事業主側からの届出忘れの場合も、確認作業の結果、機構が自動的に該当事業所として扱うため、届出をしなかったことによる大きな不利益を避けることができます。ただし、届出が遅れることで事務処理が煩雑になる可能性があるため、速やかに対応することが望ましいでしょう。


Q14. 使用される被保険者の総数が直近12か月のうち6か月以上50人を超えたことが機構において確認できなかった場合でも、事業主が特定適用事業所に該当すると判断した場合は、特定適用事業所該当届を事務センター等へ届け出ることはできるか。
A14.
使用される被保険者の総数が直近12か月のうち6か月以上50人を超えたことが機構において確認できなかった場合でも、事業主が特定適用事業所に該当すると判断した場合、特定適用事業所該当届を事務センター等へ届け出ることはできます。

機構の確認がまだ行われていない場合、事業主が自主的に該当すると判断したら、該当届を提出することが可能です。特定適用事業所に該当することで、従業員の福利厚生や社会保険の手続きが整えられるため、事業主としては積極的に対応を進めることが大切です。


Q15. 事業所の新規適用や事業所の合併時点で6か月以上50人を超える実績はないが、当該時点以降の厚生年金保険の被保険者の総数が50人を超える場合、特定適用事業所該当届を届け出る必要があるか。
A15.
事業所の新規適用や合併時点で6か月以上50人を超える実績がない場合でも、以後に50人を超えることが見込まれる場合、特定適用事業所該当届を届け出る必要があります。

新たに事業を拡大した介護施設が、今後さらに従業員を増やし、50人以上の労働者を雇用することが見込まれる場合、速やかに特定適用事業所としての届出を行う必要があります。


Q30. 1週間の所定労働時間が短期的かつ周期的に変動する場合とはどのような場合か。また、そのような場合は1週間の所定労働時間をどのように算出すればよいか。
A30.
1週間の所定労働時間が短期的かつ周期的に変動する場合でも、1年間を通じた平均の所定労働時間が20時間以上であれば、被保険者資格を取得します。

たとえば、繁忙期と閑散期がある介護施設では、従業員の労働時間が月によって大きく異なるかもしれません。しかし、労働時間の変動にかかわらず、年間を通じた平均労働時間が20時間を超えていれば、その従業員は社会保険の対象となります。変動する勤務時間を考慮しつつ、長期的な視点で対応することが重要です。


まとめ

特定適用事業所としての対応や労働時間の計算方法は、介護施設や中小企業にとって非常に重要な要素です。従業員数や労働時間が変動しやすい業態においては、法に基づいた正確な手続きが求められ、少しのミスが大きなリスクとなる可能性があります。特に、短時間労働者を多く抱える事業所では、こうした手続きを確実に行うことが、経営の安定に直結するものとなります。

しかし、これらの手続きは単に「負担」ではありません。労働時間の計算を適切に行い、正確な社会保険の適用を進めることは、従業員にとっての安心感を高め、職場全体の生産性向上にもつながります。これは、単なる事務処理に留まらず、経営の質を向上させるための「投資」として捉えるべき重要な部分です。実務対応を強化することで、従業員の定着率向上や業務の効率化が期待できるでしょう。

次回は、さらに具体的な「所定内賃金の取り扱い」や「学生労働者、短時間正社員」に対する社会保険適用について掘り下げていきます。

【参考資料】短時間労働者に対する適用拡大に係る事務の取扱いに関するQ&A集の送付について(その3)(令和6年9月5日事務連絡)

 

オンライン無料相談受付中

初回相談45分無料

お申込みはこちら

【対応エリアのご案内】
練馬区、杉並区、板橋区、豊島区、中野区を中心とした東京西部(世田谷区、西東京市、東久留米市、清瀬市、武蔵野市、三鷹市)、新宿区、渋谷区、文京区、千代田区、港区、目黒区、品川区
他エリアであっても、オンラインによる相談も承っております。
介護・福祉・医療分野
ページの先頭へ