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【福祉新聞 24.9.12】医療・福祉業界の雇用動向、改善の兆し – 2023年雇用調査結果から見る今後の展望

2024年9月12日、福祉新聞によると、厚生労働省が2023年8月27日に発表した「2023年雇用動向調査」により、医療・福祉業界の雇用状況に改善の兆しが見られたことが報じられました。具体的には、医療・福祉分野における入職超過率が前年のマイナス0.9%からプラス1.4%に転じ、2.3ポイントの大幅な改善が見られました。

調査によれば、医療・福祉業界の入職者数は前年から12万8,400人増加し、126万6,500人に達しました。一方で、離職者数は5万2,900人減少し、115万7,100人となり、結果として10万9,400人の入職超過が確認されました。前年調査では、離職超過が7万1,900人に達していたため、今回の回復は業界にとって非常にポジティブなニュースです。

このような結果は、政府の政策や介護報酬の見直し、さらには医療・福祉分野における職業の社会的評価の向上が影響している可能性が高いです。しかし、入職者が増加した一方で、依然として離職者が多い現状を踏まえれば、業界全体での取り組みがさらに必要となります。

事例:成功した企業の取り組み

当事務所のクライアント先での具体的な成功事例としてになりますが、ある中規模の介護施設では、キャリアパスの明確化とメンタルヘルスケアの充実を図ったことで、離職率が大幅に改善しました。この施設では、従業員一人ひとりに合ったキャリアプランを提示し、成長の機会を提供することで、仕事へのモチベーションを高めることに成功しています。
また、職場内でのストレスチェックや定期的なカウンセリングを導入し、従業員の心身の健康をサポートする取り組みを進めています。これにより、従業員の定着率が向上し、業務の効率化にも繋がっています。

具体的なアクションプラン

このような成功事例に基づき、医療・福祉業界の経営者や管理者が取り入れるべきアクションプランを以下にご提案いたします。

1.キャリアパスの明確化:従業員にとって明確な目標設定ができるキャリアパスを整備することが、長期的な定着に繋がります。例えば、特定のスキルを取得することで次の昇進が可能になるといった透明性を持たせると、従業員のモチベーションを向上させることができます。

2.業務の効率化:ICTやDX技術を活用して、業務負担を軽減する取り組みを推進しましょう。業務の自動化や、デジタルツールを使ったコミュニケーションの円滑化により、時間の効率化が可能です。これにより、従業員の過重労働を防ぎ、健康維持にも貢献します。

3.柔軟な働き方の導入:特に介護施設や医療機関では、シフト勤務が多いですが、短時間勤務やテレワークを導入することで、従業員がより柔軟に働ける環境を整えることが求められます。

4.福利厚生の強化:給与以外の部分で従業員の生活を支えるために、福利厚生の充実を図りましょう。例えば、健康保険の手厚いプランや、従業員の家族に対するサポート制度を導入することで、従業員の働きやすさが向上します。

事務所としての見解

医療・福祉業界は、入職者数が増加したからといって、安心できる状況ではありません。離職率が依然として高いという現実は、従業員の定着率を高めるための具体的なアクションが不可欠であることを示しています。企業や施設の成功は、従業員の労働環境に大きく左右されるため、今こそ労働環境の整備に本腰を入れるべき時期です。

特に、長時間労働の是正やメンタルヘルスの支援、キャリアアップのための教育研修の充実は、労働者の満足度を大幅に向上させ、離職を防ぐ効果があります。
経営者や管理者の皆様は、この機会を捉えて、自社の労働環境や雇用体制を再確認し、長期的な成長を目指すための計画立案が必要ではないでしょうか。

この調査結果から、医療・福祉業界の雇用動向に一定の改善が見られたことは、業界関係者にとって前向きなニュースと言えるでしょう。しかしながら、この改善を一時的なものに終わらせることなく、持続可能な成長につなげていくためには、いくつかの重要な視点が必要だと考えます。

人材確保・定着策の更なる強化

入職者数の増加は歓迎すべき傾向ですが、依然として離職者数も多い状況が続いています。この状況を改善するためには、単に新規入職者を増やすだけでなく、既存の従業員の定着率を高めることが重要です。具体的には以下のような施策が考えられます。

  • キャリアパスの明確化と支援体制の構築
  • 働き方改革の推進(残業時間の削減、有給休暇取得の促進など)
  • メンタルヘルスケアの充実
  • 定期的な満足度調査の実施と改善策の実行

業務効率化と労働環境の改善

人手不足が慢性化している医療・福祉業界において、業務の効率化は避けて通れない課題です。ICTの活用やAI技術の導入など、最新のテクノロジーを積極的に取り入れることで、従業員の負担軽減と業務効率の向上を図ることが可能です。同時に、これらの新技術に対応できる人材の育成も重要となります。

多様な働き方の導入

ワーク・ライフ・バランスの重要性が高まる中、医療・福祉業界においても柔軟な働き方の導入が求められています。具体的には以下のような取り組みが考えられます。

  • 短時間正社員制度の導入
  • テレワークの部分的導入(事務作業や会議など)
  • ジョブシェアリングの推進
  • 副業・兼業の許可(関連する資格取得のサポートなど)

処遇改善の継続的な実施

入職者を増やし、離職者を減らすためには、処遇改善が欠かせません。給与水準の向上はもちろんのこと、福利厚生の充実や報奨制度の導入など、従業員のモチベーション向上につながる施策を積極的に検討する必要があります。

産学連携の強化

将来的な人材確保を見据え、教育機関との連携を強化することが重要です。インターンシップの受け入れや、学生向けの業界説明会の開催など、早い段階から医療・福祉業界の魅力を伝える取り組みが求められます。

地域社会との連携

医療・福祉業界は地域社会と密接に関わる業種です。地域住民との交流イベントの開催や、地域の学校での出前授業など、地域に根ざした活動を通じて業界のイメージアップを図ることも、長期的な人材確保につながる重要な施策と言えるでしょう。

経営者・管理者の意識改革

最後に、最も重要なのが、経営者・管理者の意識改革です。従来の「人材確保」から「人財育成」へと視点をシフトし、従業員一人ひとりを貴重な資産として捉える経営姿勢が求められます。そのためには、経営者・管理者自身が労務管理や人材育成に関する最新の知識やスキルを習得し続ける必要があります。


今回の調査結果は、医療・福祉業界の雇用動向に一筋の光明を見出すものでした。しかし、この改善傾向を確固たるものとし、さらなる発展につなげていくためには、業界全体での継続的な取り組みが不可欠です。当社会保険労務士事務所では、これらの課題に対して専門的な知見を提供し、皆様の事業の発展と、より良い労働環境の構築をサポートしてまいります。

人材確保・定着に関する課題や、労務管理全般についてのご相談は、お気軽に当事務所までお問い合わせください。

【参考資料】24.9.12 福祉新聞 医療・福祉の入職者超過 23年雇用調査、前年より改善しプラスに(厚労省)

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