パワハラ相談急増の原因と企業の対応策:東京労働局の令和5年度報告から学ぶ

2024年8月19日 労働新聞によると、東京労働局が発表した「個別労働紛争解決制度の令和5年度施行状況」によれば、パワーハラスメント(以下「パワハラ」)に関する相談件数が急増しており、総合労働相談件数のうち7,929件を占めているとの報道がなされています。これは前年の2,524件から約3倍に増加しており、企業の職場環境に深刻な問題が生じていることが浮き彫りになりました。

東京労働局 個別労働紛争の解決制度等に関する令和5年度の施行状況 令和6.7.19

相談件数の急増

この急激な増加の背景には、2019年に改正され、2020年6月から大企業に、2022年4月から中小企業に施行された労働施策総合推進法(パワハラ防止法)が大きく影響しています。
同法では、従来の大企業に限られていたパワハラ防止措置の義務が中小企業にも拡大され、多くの企業が新たな対策を迫られています。

この法律の施行により、企業は明確な防止策を導入し、職場内のハラスメントに対して迅速かつ適切な対応を求められるようになりました。これに伴い、企業からの対応方法についての問い合わせが東京労働局に対して増加しているものと考えられます。

企業からの問い合わせ

東京労働局雇用環境・均等部によると、特に企業からのパワハラ対策に関する問い合わせが増えており、法令遵守に向けた動きが活発になっています。
「どのような対応を取るべきか」「防止策はどのように導入すれば良いか」といった具体的な質問が寄せられ、企業が法的責任を果たすために真剣に取り組んでいることが伺えます。

パワハラと正当な指導の違い

ここで企業にとって重要なのは、パワハラと正当な指導の違いを明確に区別することです。

正当な指導は、従業員の成長や業務の改善を目的とし、業務上の必要性があるものです。一方、パワハラは、相手を貶めたり、威圧的な態度を取る行為で、結果として職場環境を悪化させ、従業員が精神的に追い込まれることが多くあります。

この違いを理解し、適切な指導を行うことは、健全な職場環境を守るために不可欠です。

事務所としての見解

当事務所は、パワハラの増加が企業にとって深刻な問題であることを認識しつつ、この課題に対する多角的な視点を持つことの重要性を強調します。単なる法令遵守の枠を超えて、経営者はパワハラ防止を企業の成長戦略の一環として捉えるべきです。

まず、パワハラ問題は「個別の労働紛争」として捉えられがちですが、実際にはその根底には「組織の文化」や「コミュニケーションの不全」が横たわっています。
当事務所は、従業員との信頼関係の再構築が、パワハラ防止の最も根本的な対策であると考えています。信頼関係が築かれると、指導とハラスメントの境界が曖昧になることを防ぎ、健全な職場文化が形成されます。

さらに、従業員の成長を阻害する要因としてパワハラを捉えるのではなく、経営者自身が従業員一人ひとりに「働きやすさ」を提供するリーダーシップを発揮する必要があります。

これは、企業全体のパフォーマンス向上にもつながるでしょう。例えば、リーダーが部下に対して適切なサポートを行うことで、部下はより自発的に仕事に取り組むようになります。
このような企業文化が醸成されると、パワハラのリスクは自然と低下します。

もう一つ注目すべき点は、パワハラの発生原因を組織の構造や運営方法にある「隠れた問題」として捉え、そこから新たな解決策を模索することです。
パワハラ問題は、短期的な対策だけではなく、長期的な視点で職場環境全体を見直す必要があります。例えば、コミュニケーションの改善や柔軟な勤務形態の導入、役割の明確化などの取り組みは、パワハラの発生を防ぐだけでなく、組織全体の働きやすさを向上させる効果も期待できます。

当事務所には「ハラスメント防止コンサルタント」の有資格者が在籍しており、企業がこの課題に対処できるよう実践的なアドバイスを行っています。パワハラを防止するためには、まず企業が明確な防止方針を掲げ、従業員が安心して相談できる体制を整備することが重要です。また、事実関係の調査や迅速な対応、適切な措置を講じることで、問題の根本解決を図ることができます​。

まとめ

パワハラ相談件数の急増は、単なる労働問題ではなく、企業の持続可能な成長を妨げる深刻な課題であることが再確認されました。パワハラ防止法の施行をきっかけに、多くの企業が職場環境の改善に向けて取り組みを進めています。しかし、適切な対応が遅れたり、対策が不十分であると、結果的に企業にとっても大きな損失となり得ます。

当事務所では、企業がこのような問題に直面した際、迅速かつ効果的なサポートを提供しています。詳しくは本ホームページ「ハラスメント防止対策」のページをご覧ください。パワハラ防止対策を強化し、労使間の信頼関係を構築することで、健全な労働環境の実現を目指しましょう。
当事務所では、労務相談顧問の顧問先の企業様に対して、事業所様が抱えるハラスメント問題に対するお手伝いをし、企業の未来を支えていきたいと思っています。また、現在、45分間の無料オンライン相談も承っております。ハラスメント問題についてお困りの事業所様は、この機会に是非ともこのサービスをご利用ください。

引用元:24.8.19 労働新聞 ニュース 「パワハラ相談3倍に 企業から対応問合せ増加 東京労働局」
【参考リンク】東京労働局 個別労働紛争の解決制度等に関する令和5年度の施行状況について
【参考資料】東京都 令和5年度個別労働紛争解決制度の施行状況

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