過労死等の防止のための対策に関する大綱の変更について(3)
2024年8月2日、厚生労働省は「過労死等の防止のための対策に関する大綱」の変更を閣議決定しましたが、これは過労死ゼロを目指し、健康で充実した働き方を実現するための重要なステップです。前回の記事では、この大綱変更の具体的な内容と取り組むべき対策について説明しました。最終回となる今回は、特に介護施設や中小企業における具体的な実践方法について詳しく解説します。
医療・介護・福祉施設における取り組み
医療・介護・福祉施設では、従業員の健康管理と働きやすい環境作りが特に重要です。以下の具体的な取り組みを導入することで、過労死防止と職場環境の改善を図ることができます。
- 勤務間インターバル制度の導入: 医療・介護施設では、シフト勤務が一般的ですが、勤務間インターバル制度を導入することで、従業員が十分な休息を取れるようにすることが重要です。2023年の調査では、介護施設のうち勤務間インターバル制度を導入している施設はわずか5.4%にとどまっています。これを改善することで、従業員の疲労軽減と健康維持に寄与します。
- メンタルヘルス対策の強化: 医療・介護・福祉業務は精神的な負担が大きいため、メンタルヘルス対策の充実が不可欠です。ストレスチェックの実施や、専門のカウンセラーによる相談窓口の設置を行い、従業員がメンタルヘルスの問題を早期に相談できる環境を整えます。小規模な施設でも、外部の専門機関と提携することで対応が可能です。
- ハラスメント防止の徹底: 医療・介護・福祉施設内でのハラスメントを防止するため、従業員全員への啓発活動や管理職への特別な研修を実施します。ハラスメントの兆候を早期に発見し、迅速に対応するための体制を整えることが重要です。相談窓口の整備も欠かせません。
中小企業における取り組み
中小企業においても、従業員の健康と働きやすい環境を整えることが過労死防止に直結します。以下の具体的な実践方法を導入することで、従業員の健康管理を強化し、企業全体の生産性を向上させることができます。
- 労働時間の適正管理: 中小企業では、労働時間の適正な管理を行うために、タイムカードや勤怠管理システムの導入を推奨します。2024年のデータによると、タイムカードや勤怠管理システムを導入している中小企業は65.3%にとどまっており、更なる普及が必要です。在宅勤務やフレックスタイム制度の導入も、柔軟な働き方を推進する上で有効です。
- メンタルヘルス対策の強化: メンタルヘルス対策として、ストレスチェックの実施を徹底し、専門の相談窓口を設置します。特に、50人未満の事業場でも積極的にストレスチェックを実施し、従業員のメンタルヘルスを守る取り組みを強化します。外部の専門機関との連携も重要です。
- ハラスメント防止の徹底: 中小企業においても、ハラスメント防止のための啓発活動を積極的に行います。管理職に対する研修を強化し、ハラスメントの予防と対応能力を向上させます。相談窓口の整備や外部機関との連携も有効です。
まとめ
今回の「過労死等の防止のための対策に関する大綱」の変更に基づき、介護施設や中小企業における具体的な実践方法を解説しました。労働時間の適正管理、メンタルヘルス対策の充実、ハラスメント防止対策の徹底は、いずれも従業員の健康と安全を守るために欠かせない要素です。
当事務所では、これらの対策を企業に実践していただくための具体的な支援を提供しています。
特に介護施設や中小企業においては、規模に応じたきめ細かなアドバイスを行い、労働環境の改善をサポートしています。労働時間の適正管理、メンタルヘルス対策の強化、ハラスメント防止の徹底に向けた取り組みについて、最新の情報と専門的な知見を提供し、クライアント企業の皆様とともに健全な労働環境の実現を目指してまいります。
詳しくは本ホームページ「ハラスメント防止対策」のページをご覧ください。
これまで3回にわたって「過労死等の防止のための対策に関する大綱」の変更について解説してきましたが、今後も引き続き、最新の情報を提供し、企業の皆様の支援に努めてまいります。何かご質問やご相談がございましたら、ぜひ当事務所までお問い合わせください。
【参考リンク】厚生労働省 「過労死等の防止のための対策に関する大綱」の変更が本日、閣議決定されました
【参考資料】「過労死等の防止のための対策に関する大綱」